第157話:ガチャ、ガチャ、ガチャ!

 経営者の部屋に移動した二人はいつも通り椅子に腰掛けてメニュー画面に視線を落とす。

 ダンジョンの項目からガチャを選択して10連ガチャを選択。一気に10000ゴルが消費されるが、アルバスがグランドドラゴンの魔石を換金してくれたおかげで全く減った気分にはならない。

 というか、換金された時点で廻にも一部の金額が還元されているので相当な金額が表示されている。


「おぉっ! レア度3が出ましたよ!」

「うーん、それでもライガーか。アウリーラウは昇華や進化に使えそうだな」


 出てきたモンスターを全て素材にするのではなく、昇華や進化に必要なモンスターがいれば確保してそのままレベルを上げていく。

 ガチャを続けていくとアウリーラウだけではなくクイーンピクシーも出てきており、他にもレア度3が揃ってきたことで十分な戦力になるとアルバスが太鼓判を押す。

 そして、ここでさらに良い誤算が発生した。


「たくさんガチャをしたから、特典が手に入ったにゃー!」

「何々? 何が手に入ったの?」

「いっぱいだにゃ! その中でも経験値の実もあるし、レアガチャチケットもあるのにゃ!」

「レアガチャチケット! やった!」

「待て待て、そうなるとレア度の高いモンスターが手に入ったらまたレベル上げが必要になるぞ?」


 現状はライとストナのレベル上げが最優先だが、仮にレア度4や5のモンスターが手に入るとそちらにも素材を回さなければならなくなる。

 レベルを十分に上げることができるのか、そこをアルバスは懸念していたのだが廻はそこも考えていた。


「経験値の実も手に入ってますから、そこまでの素材は必要ないと思いますよ」


 経験値の実はモンスターを素材にするよりも多くの経験値を手に入れることができる。

 個数を確認してみると一〇個は手元にあるのでこれらを使えば問題はないと考えていた。


「それに、まだまだガチャは回しますからさらに増える可能性もありますしね」

「……まあ、それもそうか。それに、小娘の運だとレア度3が出る可能性の方が高い気もするしな」

「アルバスさん、酷いです!」

「どうするにゃ? レアガチャチケットを使うかにゃ?」

「使うわよ!」


 金色のレアガチャチケットを使い金色の粒子が六芒星を作り出す。廻は両手を胸の前で重ねながら見つめている。すると――


「……き、金色の六芒星が、大きくなった!」

「これは期待ができるのか?」

「分かりません! でも、ピクシーやランドンの時にはこんな風になりませんでしたよ!」


 前回と違うことが起きているということは、レア度の高いモンスターが出てくる可能性は高いと廻は考えている。

 ドキドキしながらモンスターが現れるのを見ていると――廻の予想は当たる結果となった。


「にゃにゃーっ! レア度4のアークエンジェルだにゃー!」

「おぉーっ! エンジェル!」

「マジかよ、こいつは……ランドンと並ぶ実力のモンスターだな!」


 元冒険者の血が騒ぐのか、アルバスはランドンを見た時と同じく獰猛な笑みを浮かべている。

 しかし、今は戦うことよりもレベル上げ、その先にある配置についてを考えなければならないのでダンジョンに潜るのは今度にしようと自分に言い聞かせていた。


「……経験値の実はアークエンジェルに使うぞ」

「そうですね! これでレア度4がランドン、ライ、ストナ、そしてアークエンジェルの四匹! これは、一気にランキングを上げられるチャンスなのでは! あぁ、それよりも先にアークエンジェルの名前を決めなきゃですね!」

「名前はそこまで重要じゃないだろう」

「大事ですよ! それに、アークエンジェルって長いじゃないですか!」


 笑みを浮かべながら名前を考え始めてしまった廻に嘆息しつつ、アルバスは冷えた水で喉に潤いを与えていく。珍しく興奮していたようで、喉が渇いていたことを改めて実感してしまう。


「……こいつは、ゼウスブレイドがランドンまで辿り着けない可能性も出てきたんじゃねえか?」


 冷静になって考えてみると、廻が言う通りにランキングは一気に上がる可能性が高い。今のランキングからすると明らかに難易度が一気に上がり過ぎているのだ。

 現在のダンジョンランキングが913位。レア度5はいなくともレア度4が四匹となればダンジョンランキング500位台にいてもおかしくはない。

 ゼウスブレイドが普通よりも強いライとストナ、そしてアークエンジェルで苦戦しようものならランドンまで到達できない可能性も出てきており、一五階層で配置がおさまるかも心配の種になっていた。


「……こりゃあ、数によっては階層を開放する必要も──」

「よし、これだあっ!」


 アルバスが配置について考えていると、アークエンジェルの名前が決まった廻の声が経営者の部屋に響いた。


「んで、何になったんだ?」

「うふふー! アークエンジェル、貴方の名前は──アークルだよ!」

「……アークル、かにゃ?」

「そうだよ! アークエンジェル、名前の最初と最後の一部を取って付けたの!」

「まあ、他の奴らの名前から予想はできたが……雑だよな」

「こ、これでも一生懸命考えているんですよ!」


 腕を組み、頬を膨らませて怒ったアピールをしている廻だが、アルバスは特に気にした様子もなくアークエンジェル改めアークルを見つめている。


「……小娘、レベル上げの目処がついたら階層の開放についても話し合うぞ」


 そんなアルバスの言葉に、怒ったアピールをしていた廻の表情は一変して真剣なものになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る