Follow the Shadow
ヘルニア
第1部 第1話 永遠の17歳
太陽は沈まないものの時刻は夕刻、満員電車に揺られ、右手で吊り革を握るのに必死な少女が1人。左手はポッケに突っ込み、周囲をきょろきょろ見回している。
そんな彼女の目の前の優先席には、長いつばの帽子をかぶった老人が1人。左手に革のバッグを持ち、右手ではスマホをいじっている。
次の駅まで間もなくというところで、人ごみの隙間からその様子を見かねた俺はしびれを切らした。
「うわー!盗撮だー!」
騒然とする車内で老人はスマホを慣れたような手つきでバッグにしまい、何事もなかったように寝たふりをする。少女は一瞬こちらを見て軽く会釈するとそそくさと隣の車両の方へ去っていく。
言うまでもなくグサグサと刺さってくる視線が痛い。目的の駅までずっと好奇の眼差しに耐え続けた。この独裁国家ファンクも末だな。
「ただいまー」
玄関の戸を開けるとつけっぱなしにされたままのテレビのニュースが耳に入る。
「A線の電車内においてスリの常習犯が現行犯逮捕されました。目撃者の証言によりますと、いきなり大声を出す少年に動揺して・・・」
「おお、リク、お帰りー。夕飯できてるぞー」
「サンキュー、親父」
「お疲れのリクのために焼肉チャーハン作ったぞー」
「ったく、もう少し節約しろよなー」
「ハハハ!金はあるうちに使っとけってなー!」
養父の幹は少し金遣いが荒い。職業だって息子の俺にも教えてくれたことはない。少し気になったので夕食を取りながら尋ねてみた。
「なあ、親父。親父の仕事ってさ、なんなの?」
「おいおい、またそれか。33回聞いたぞ、その問いは」
親父は呆れながら七味唐辛子の瓶を手に取った。
「いやさ、何度聞いても適当にはぐらかされるから、流石に、な?」
テーブルの上にずいっと乗り出すような形で俺は焼肉のたれを手に取る。
「そうだな、まあ今日は多分リクのお手柄の件もあるし、特別に教えてやろうか!」
「???」
「おおう?自覚ないんだなあ、まったく。でも、そこがお前のいいところでもある」
親父は豪快に米と肉のタッグを口に放り込むと、今度はさらにジョッキのビールをのどに流し込んでから、34回目の問いにようやく答えた。
「ずばり!」
「ずばり?」
「独裁国家ファンクの政治屋だ!」
「ほほう?」
「ん?あんまり驚いてないな。お父さんションボリ・・・」
「いや、だって。政治家とは違うのかな、とか思ってさ」
「そんなこと言ったって陸の方が謎だぞ?見た目が17歳のままなんだからな」
その通りである。俺の見た目は親父に引き取られる前から17歳の少年のままで変わることはない、つまり不老なのだ。それを気味悪がられて貰い手がいないまま孤児院で何年も過ごしていた。親父はこのことを特になんとも思ってないらしい。この気遣いのない言動もそのためなのだろう。
「俺も昔の記憶がないんだから仕方ないじゃないか。そんなことより親父のこと、教えてくれよ」
催促したが、親父はまたもはぐらかした。まあ、いつものことだが、、、
俺の家は俺と親父の二人暮らし、親父は40代、俺の年齢は不明だが一応高校に通っている。藤々(とうどう)家は特に代わり映えのしない生活を送る普通の家庭である。
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