2-キリンと僕
冷房の風が冷たい。僕は席を移動し、向かいの窓の外を眺めた。すると、隣の子供も同じように、車窓から外を眺めている。
「お母さん、キリンだよ」
「そうねえ」
子供の母親はまるで相手にしていない。僕も見ていたはずの外。雲の形だろうか。目を凝らすと、確かにキリンがいた。マンションから、首だけ出すサバンナのあの動物だ。ベランダには出ず、窓から首だけ出している。一瞬だが、確かにキリンが通り過ぎていった。
「マジかよ」
僕が呟くと、子供が嬉しそうに言う。
「ね!キリンいたでしょう」
「あぁ、いた!」
子供の母親は僕が話を合わせていると思い、何度も「すみません」を繰り返す。
「いや、いたんですよ」
「だよね、いたよね!」
母親にいくら訴えても信じてはもらえない。私と子供は同時に溜め息をつき、外を指した。
「キリンがいたんだ」
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