第1章 会遇の毒殺

第1話 こんな探偵部

 授業終了のチャイムが鳴り、その余韻よいんが消える前に部室の扉を開ける。

「やっぱりここにいた!」

 私は、部屋の奥で堂々と椅子にもたれて本を読む男に声をかける。その声に、またかと言わんばかりのしかめっつらをされる。

「掃除当番またサボったでしょ!」

「だって、面倒だし」

 小学生みたいな言い訳しやがった!

美咲みさきさん!なんとか言って下さいよぉ!」

 私はカップにコーヒーを注ぐ部員に助け舟を求める。

 一方で私に頼られた美咲さんは、私を一瞥いちべつすると、

「知らない」

 たった4文字で会話を打ち切った。くそぅ。

 最後の頼みのつなは、もうこうちゃんしかいない……。

 そう判断して、もう1人の部員に顔を向ける。それと同時に、

「依頼ですよ!10分後に出発しましょう!」

 私が喋る間もなく出動命令が出る。

 すると、私に見られていることに気づいた江ちゃんは、

「何か用ですか?特にないなら真希さんも早く準備して!」

 そう言って背を向けた。

 ……白澤くんが掃除をサボるたび、怒られるのは私なのにぃ。なぜ私がこんな扱いを受けなきゃならないのか……。


 それでも私がこんな所に、こんな部活にいる理由。それは、今からさかのぼること1ヶ月……。

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