第21話

「お前ら最近、八木っちと仲良くない?」

同じ男子バスケ部の、2年の先輩に話しかけられた。


俺も枇杷島も一応はスタメンだが、2年のメンツもあって練習日は微妙な立ち位置であった。中学の部活は、顧問がくるまでの自主時間は実力主義というより、でしゃばってるやつがメインの練習なのだ。

顧問が体育館にこれば、試合同様のメンツがメインで練習できる。


「そんなことないっすよ。」

「そうですよ、先輩。俺もジョーも楽しくバスケしてるだけっす!」

「そうか?なんか合宿行くって聞いたけど。なんだよ。」

「なんだよ、それ。俺初めて聞いた。」


わらわらと、人が集まってしまった。

練習が止まって、騒ぎだしたからか、隣のコートで練習してた女子バスケもこちらを気にしているようだった。


「おい、何やってんだ。サボってるやつは帰れよ。」


八木先生が来た。

副顧問の織田先生もだ。


「集合!」


部長の掛け声で集まった。


織田先生は、現役時代は県代表だったらしい。らしいというのは、もう今はおじいちゃんみたいで。

ただ大会の主審判をしているから偉い人なんだろうとはわかった。

あと、たまに練習をみてくれたり、見せてくれたりするのが上手で

フォームも綺麗で、

なにより

体型が現役選手のようだ。無駄のない筋肉と、脂肪は全くない。


「何かあったのか。」

「先生、1年が合宿に参加するって聞いたんですが本当ですか。」

「俺たち何も聞いてないっす。」

「枇杷島とジョーだけずりーっすよ。」


織田先生はボールをかしてみなさい、とパスをうけとった。


3Pラインから綺麗に、ゴールに吸い込まれるようにはいった。


「誰か、できるかね。」


3Pの練習は毎日のようにやっている。

得意なやつもいるはずだ。なのに、誰も前にでない。


「ジョー、やってみなさい。」

「え、俺ですか。」


俺は、正直かなり苦手だった。

身長が低いから、かなり飛ばないと届かないし、

なによりシュートすることより、シュートさせることを最近は考えていたからだ。


ラインにたつ。

息をすってゴールをみた。


その時、学校の体育館にいたはずだったのが、

一瞬どこか知らない場所の体育館に立った感覚になった。

まるで、目の前に知らない敵がいて

ゲームをしているようだった。


打たないと、

負ける。


そう思って、

シュートした。


ボールはリングにあたって、落ちた。

中にしゅるっと入っていった。


ボールを追うと、ゴール下に

枇杷島がいた。


「なんで、」

「お前をひろうのが、俺の役目だろ。」


やけに大人びた彼に目を奪われた。

ああ、これはいつだ。



はっと、した。

シュートしたあとで、ここは中学の体育館だった。


ダンダン、とボールを打つ音。

枇杷島は俺が打ったボールをもっていた。


「おそらく皆んなバスケが好きでプレーしている。でも、この2人はおそらく、皆んなよりもバスケの事を考えている時間が多いはずだ。

だから先生たちは、その手伝いをしてやろうと思い合宿に参加させること決めたんだ。

皆んなも応援してくれると頼もしいよ。チーム全体が結束が強くなると言うことは、さらに強くなれるということだからね。」


そうだ、ここにいる誰よりもバスケの事を

考えているのは

胸を張っていえる。


「部活に支障はださせません。頑張るので応援お願いします。」


頭をさげた。

おおげさかもしれないけど、

昔だったら絶対しない。

でも、おれは

人にもバスケにも誠意をもって向き合いたい。

昔できなかったことを

やっていきたい。

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