最後の壁



あの激しい戦いの中、一切興味なくクロウさんに集中する白髪さん。

今もなお、頬ずりの手を止める気はなさそう。

でも、エルザさん達みたいにすぐに攻撃してこないから話したら分かってくれるかも。


「あ、あのすみません…。」


「へへへ、クロウクロウクロウクロウ…。」


「あ、あの!すみません!」


「クロウクロウクロウクロウクロウくんかくんかくんか」


白髪さんには僕達の姿が映ってないのかもしれない。

恐る恐る距離を縮める。


でも、そんな僕らを阻むように地面からどす黒い触手が何本も生えてきた。

僕の危機管理さんが迫りくるあれをやばいと判断し、一旦後ずさり。


触手が触れたのはさっきまで僕らが居た場所。

地面はジュクジュクと焦げ臭い匂いで溶解した。

もしあれに当たっていたらと思うとゾッとする。


頬ずりを相変わらず続けるも視線だけはこちらを見据える。


「へへ怖いねぇ、でもクロウ大丈夫だよぉ。私がいるからワタシハイルカラ。」


「い、いやぁ…。」


白髪さんからしたら僕らはクロウさんを攫おうとしている賊。

でも、守っている人が一番怖がっているのは貴方ですからね。



体制を立て直してもう一度。

でも、ちょっとでも近づけばあの禍々しい触手が行く手を遮る。

邪魔者は許さないと言わんばかりに緩むことが無い。

ここは神様も切れ味に驚くサバイバルナイフを取り出す。これならあの触手にも溶けることなく対抗出来るはず。

ナイフを片手にリベンジ。

再度、挨拶してくる触手さん達。

僕も挨拶代わりにスパスパと斬っていく。予想通り触れても溶けない。流石はあの神様も驚くだけの事はある。



しかし、触手さんは我を倒しても第2第3の我が現れると言うように際限なく出現する。

あの白髪さんを倒せばどうにかなると思うけど、これでは近づけないよ。


どうするか考え込んでいるとついに白髪さんが話しかけてきた。


「ぐふふ、無駄よ。この子達は私とクロウの愛の結晶。私達が愛し続ける限り生まれ続けるわ。ぐへへへ、クロウクロウクロウクロウ…。」


そう言うと、またクロウさんへの愛のスキンシップを再開した。

そして本当に生まれる触手さん達。


要は、二人を引き離せれば触手が増えなくなるってことだよね。

けれど言うは簡単でも行動としては難しい。

あの無数とも呼べる触手を掻い潜って引き剥がすなんて出来るのだろうか。


仮に突破出来てもクロウさんには大きな鉄球が架せられている。



くっ、どうすればいいの…。


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