勝てど壁はもう一枚



一時的に膝の力がなくなり、事無きを得たけどまだ僕の方の勝負はついていない。

ヴァルさんの方は体当たりが功を奏し、ロールさんのロールで防ぐことが出来ずあえなく撃沈。

ロールが見事に霧散していく光景はなんだか綺麗でした。



さて、僕も頑張らないとね。


もう油断はしない。

なるべく怪我をさせないように意識した結果が相手の覚醒に自分への代償となって返ってきた。

だから、僕も人の枠をちゃんと超えます。

多少威力を強めても今の彼女達なら命を削るまではいかない気がするもん。


短剣を構え直し相手の出方を伺う。


「ふ、コータくん目つきが変わりましたね。いよいよ本気になりましたか?ですが、私達が勝ちます。」



絶対的勝利を疑わない二人は先程と同様に遠慮のない強欲な殺意を振りかざす。

でも、もう何度も受けるつもりはない。

これでも何体ものドラゴンさんや何人もの変態さんの相手をしてきてレベルは上がってるんだよ。


明らかに少し前の子供とは思えない動きに二人の変態さんは驚いて一旦後ろへと飛び下がる。


「ちっ、動きがまるで違う。また補給するしかあるまい。」


「そうですね。」



ごそごそごそのくんかくんかすーすーの挙句に装着。

何を頭に付けたかは内緒だよ。

もうやめてよ、クロウさんが羞恥心で真っ赤に破裂しそう。



ビキビキと筋肉が滾り始めた真変態さん。


「「ジャマモノコロス、ユルサン。」」


理性は頭の衣類に捨てたようだ。

もうこれ以上見ていられない。


お互いに人間の領域を超えた速度で迫り、そして激突する。

ひ、血走ってる…。


鬼よりも怖い形相が超至近距離でドン引き。

小さく漏れた悲鳴の後には屋敷全体を揺るがす衝突音。


地下室なのに不思議な演出で砂煙が舞う。


自然災害に近い衝撃の中、立っていたのは…………僕。



二人の変態さんはそれぞれかすかに僕へ悪態をつきながら地面へと倒れ伏した。

これで僕は晴れて姫様への暴行で犯罪者となってしまった。

でも、構わない。

これでクロウさんが救われるなら。



僕はベッドに固定されたままであろうクロウさんに目を向けた。


「へへへ、クロウクロウクロウクロウクロウクロウ…。」



そういえば忘れてました。

もう一人居たことを。

こんな状況下でも自分の欲望に忠実なようでまだ頬ずりをしていた。



これで最後だ頑張ろう。


5人目の白髪な変態さんにいざ声をかける。


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