岩竜さんの性なる癖
僕は親友の為、僕達の未来の為に巨大な岩みたいな竜さんに立ち向かう。
よく注視して意気込んだものの対峙してから一向に相手は攻めてこない。こちらの出方を伺っているのか、それとも僕等を甘く見ているのか。
「ヴァルさん、あの岩竜さん全然攻撃してこないね。もしかして様子見?それとも油断しているのかな?」
「違うのである。あれはグリーストの悪い癖。強固ゆえに相手の攻撃を全て受け止めて、飽きたら攻撃を開始する。それだけである。」
えーと、つまりどういうこと?
「要は痛みで快楽を感じる生粋の変態である。」
なるほどあまり関わらない方が良いタイプのドラゴンさんか。
早めに片を付けよう。
どすんと構え、今か今かと待ちわびる岩竜さんに巨大な炎を放つ。
全く避けることなく喜んで受け止めている。
「おぉ、人間の癖になかなか良い魔法を打ってくるではないですか。あーじりじりと皮膚に熱が伝わってくる。気持ち良いですが、まだまだです。はぁはぁどんどん来なさい!」
き、気持ち悪い。
一応、ヴァルさんの知り合いみたいなものだから加減は心得ているけど、びくんびくんと巨体をよじらす姿は見るに耐えない。
ヴァルさんはとても冷めた目で一切の遠慮のない黒炎を何発も放っている。
「良い‥はぁ、良いですよヴァルガルド。人間よ、見習うといいこの迷いのない攻撃を。」
「キモいのである、キモいのである、気持ち悪いのである!」
僕達は何十と幾重もの魔法を打ち込み続けるが、腐ってもドラゴンさん。
あの分厚く硬い表皮が突破出来ない。
岩竜さんはゆっくりと噛みしめるように痛みを味わい悶えている。
そして、一旦攻撃を止める。
いくら魔法を放っても厳しい。
「なんだもうおしまいか?なかなか気持ち良い一時でありましたが残念。まぁイザベラ様の容赦ない愛の鞭に比べればまだまだ温いですがね。あの御方に罰として尻尾を引き千切られた時どれほど至福か。道端に転がる石のように見つめられることがどれほど快感か。」
グリーストさんは恍惚とした表情で遠くの王都を見つめる。
鳥肌が止まらない。
遠い目をした岩竜さんは急にキリッとした顔つきになり、僕等を見やる。
「それでは終わりといたしましょう。人間にしては楽しませて頂きました。お礼になるべく痛みの無い死を与えましょう。」
ついに攻撃を仕掛けてくる気だ。
もう魔法で気絶させようなんて考えてる場合じゃなくなった。
万事休す。
僕は諦めた。
諦めてサバイバルナイフを取り出す。
神様も驚きの切れ味のね。
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