逃避行調査



次の日になってもヴァルさんの顔は浮かないまま。ギルド訪れてからずっとこの調子。偶に笑ってくれるけど、そこに力はない。


ここは気分転換をと依頼を遂行しよう。

王都の外で体を動かせば少しは気も紛れるはずだよ。


チビうささんにヴァルさんの介護をお任せしつつ、宿屋を出て外へと向かう。


王都の外周に冒険者らしい姿は見当たらない。代わりにローブを纏いいかにも魔法使いさんっぽい人達が魔物の駆除や演習を行なっている。

これは新人冒険者が育たないのも頷ける。

冒険者にとって商売敵でも住民からは安心安全で頼もしいだろうな。



僕らはヴァルさんの事もありなるべく関わらないように山岳地帯へとこそこそする。

しばらく歩けばもうあの人達の姿は見えない。

目に映るのは、山肌にゴツゴツと点在している大きな岩達のみ。

凄く歩きにくい、注意して歩かないと躓いてしまいそう。

今回の依頼はここら一帯の調査。なんでもたまたま通りかかった商団が空を飛行するワイバーンを見掛けたらしい。そんな上位の魔物がここを棲息地にしているのか、それを調べて下さいって依頼。

ワイバーンさんとは以前にも相手して貰ったし問題ない。



問題はヴァルさんがこの冒険の間で復活してくれるかどうかだ。

でも、心なしか少し表情が明るくなったと思う。

おやつに渡した果物も美味しそうに頬張っていたから調子を取り戻してきてるかな。


活気が湧き出した僕達は、前方に見える小高い山を目指す。

理由は明白、索敵の魔法で沢山の反応があるから。

十中八九ワイバーンさんだね。

数もなかなか、運動して良い汗をかきましょう。



山を登り始めた僕達に予想通りのワイバーンさん達が出迎えをしてくれる。

返事代わりに魔法や短剣で応戦していく。

ヴァルさんも何かを振り払うように積極的に戦っている。



ほぼ一方的な執行される挨拶は山頂に辿り着くまで続いた。




そこで待っていたのは大きな岩山のようにそびえるドラゴンの岩竜さんだ。

ヴァルさん、この人は例のドラゴンさんじゃないよね?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る