小話 ストーカー始動



ここはサイデルにある領主の屋敷。

一室を借りて三人の娘と黒装束を纏うその従者達が集っていた。


この見るからに怪しい集団は一つの目的の為に立場が違えど協力をしている。

まずは兎耳の女帝と称される女性が口を開く。


「やはりソフィア様方も同じような体験をされたのですね。」


「ええ、あれはただの夢とは思えないほど鮮明で辛辣な体験でした。」


三人娘達は一様に苦い顔であの時を思い出す。

3人は神様と名乗る少女に未知の世界へ呼び出され、神様直々の説教を受け心の底までズタボロにされた。

おかげさまで数日は悪夢にうなされ苦しませて頂きました。



「あの少女は神様なのでしょうか?」


分かりきった事実を再確認するようにこの屋敷の令嬢アリシアは呟く。


「間違いなく神でしょう。何の魔法も無く私達に一切の抵抗もさせないのですから、やたらと輝いておりましたし。しかし、まさかコータさんと繋がりがあるとは‥。」


「更にはコータ様を未来の旦那様と仰っていましたね。かなり懇意にしているようですわ。」


「神様が相手となると手強いですね。ですが‥。」


「「ええ」」


三人娘はお互いの意思を確認するように頷く。



「「「これで私達の未来の旦那様を諦めるつもりはありません(わ)!!」」」


愛の為なら神にも挑まんとする三匹の怪物。

不敵な笑みを浮かべ黒装束の隠密を従える姿はとても恋する乙女には見えない。

そう隅っこで思うディーと呼ばれる騎士。

彼は何処かにいる標的とされる少年へ最大の同情心で祈りを捧げた。




こうして作戦会議が始まる。

議題に挙がったのは大きく二つ。

一つ目は、神様について。敵対ではなく取り込めないか。もし協力を得れば途轍もない戦力。


二つ目は、コータ様との今後について。神様情報では現在国外。追うにしても接し方を間違えればまた逃げられてしまうだけ。どう接するか、目の前に現れて自分達の欲望を抑えられるか、とても悩ましい難題だ。

以前のように自分の欲に忠実過ぎては捕らえられない。如何にして己の本能を抑えよう。


なかなか進まない会議はヒートアップしてまもなく夜を迎える。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る