小話 ドコ?ドコニイルノォ‥11



結局、宿屋の部屋に着くまでコータ様を背負う権利を勝ち取ることはありませんでした。

貴族という立場がどうしても背負わせてはいけない理由にされる。悔しい。


でも、ベッドで寝息を立てて寝る姿。実に良い。ララさんと一緒にこっそり鼻血を出しました。

名残惜しいですけど屋敷に戻らなくてはいけません。

やっとお会い出来たのです。

これからは普通に会えるようにしないといけませんね。


宿屋を離れる際、隠密部隊の1人にコータ様をこっそりと見守ってもらう。

これで安心して屋敷に帰れます。



屋敷に戻り、カルロス様と一緒にお父様にご報告。


「おお、カルロス無事だったか。良かった。」


「はっ、ありがとうございます。キングオーガを冒険者が倒したことで統率がなくなり魔物たちも逃げていきました。」


「そうか、よくSランクの魔物を倒せたものだ。誰が倒したんだ?出来れば直接お礼を言いたいんだが‥」


お、良い流れですわ。

カルロス様その調子です。


「コータというCクラスの少年です。私も彼の力の片鱗を見ましたがあの女帝が認めるのも頷ける実力です。」


「ほう、それは凄いな。是非会ってみたいな」


「13歳でSランクを倒す腕前、末恐ろしいです。」


よし、私も後押しを。


「お父様、以前私がオークに襲撃された際、黒髪の少年に助けていただいたこと覚えてらっしゃいますか?私は今日コータ様を見て確信いたしました、同一人物だと。」


「ふむ、それが事実なら尚更会わなくてわな。」


「では、すぐにお誘いしましょう。彼は明日ギルドに報酬を受け取りに行くと思うので、ギルドに伝えておきましょう。」


「まあまあアリシア落ち着きなさい。ギルドマスターとは知り合いだからすぐに伝えられる。」



よし、やっと意識のある時にお会い出来る。

ウキウキ気分で部屋に戻る。


部屋にはすでに隠密部隊が控えていた。

妙に重い空気ですわ。


「どうしたの?」


「お嬢様、それが‥コータ様を見守っていた者が宿屋の屋根裏で鼻から大量の血を流し倒れておりました。」


「な、なにがあったの?」


コータ様の身に何か起きているの?


「私も危険と判断したため直視は出来なかったのですが、コータ様が猫の着ぐるみを着用して寝ておりました。くふ」


そう報告する子も鼻から一筋の赤線が。

猫の着ぐるみですって‥。

行かなくては。


私が扉に向かおうとすると、隠密部隊全員で抑えて来る。


「は、離してっ!」


「お嬢様ダメです!あの姿はまだお嬢様には攻撃力が高すぎます!出血多量で命に危険が!」


「お願い‥私を、私を行かせて‥」


結局、総出で取り押さえられたので行けませんでした。


ふふん、良いんです。すぐにこのお屋敷でお話出来るでしょうし、明日の大宴会でお会い出来るかもしれないですしね。


明日が楽しみですわ。






大宴会で盛り上がる街の中、あらゆる報告を聞いた女の子の悲哀と絶望のこもった遠吠えが木霊した。

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