神様の主張



ギルドでの用事を終え、教会に向かう。

教会の静観とした雰囲気が実にいい。

僕のサイデルスポットベスト3に入る。1位は宿屋で2位は武器屋さんだ。


中に入ると、以前と同じシスターさんが掃除をしている。


「こ、こんにちは‥」


「あら、こんにちは。またお祈りにいらしたんですね。」


どうやら顔を覚えてくれていたみたい。


「は、はい。」


「熱心なことは素晴らしき事です。フィルロード神も見守っていらっしゃると思いますよ。」


うん、間違いなく見守ってると思う。


僕は前回と同じくお布施を渡して、神様の大きな銅像の前まで行く。

片膝をつき、祈りを捧げる。


「ゴーダざぁーん!ばいたかっだでずぅー!」


「ひっ‥」


前回のことがあったので、祈りの最中から警戒して良かった。上手く避けれた。


でも、神様は顔面からスライディングをかました形となっている。動かない。

少し申し訳なく感じる。


「ひぐっ‥コーダざん。ひどいでずぅ‥うぅ」


倒れたまま鼻をすする神様。

多分泣いてる。


「あ、あのごめんなさい。つい警戒していたもので‥」


「うぅ‥神様に警戒するってどういうことですかー。これは大好きって言ってもらえないと立てないですぅー。」


どうしよう。

絶対言うまで起きないつもりだ。


「つもりですよー。」


心を読んでまで言わせる気だ。

諦めよう、こういう神様なんだと。



「ちょっと酷くないですかー。はい、3、2、1、どうぞ!」


「だ‥大好きです神様。」


赤くなる顔を逸らしてボソボソと言う。


「むふ、神様ふっかーつ!」


左手を腰に添えて、右手の人差し指を天高く上げて復活?のポーズを決める神様。


「ふぅ、では改めましてお久しぶりです、コータさん。」


「お、お久しぶりです神様。」


神様のこのコロコロと変わるテンションについていけない。


「コータさん色々とご活躍のようでなによりです。妻として喜ばしい限りです。」


そういえば、何故か妻宣言されていたんだっけ。あの時の冗談だと思ってた。


「はは、冗談な訳ないじゃないですかーははは。」


ちらっと見た神様の目は本気だ。


「それでコータさんに言っときます。色々と出会いを経て小賢しい女性関係も生まれているようですが、ですが‥」


女性関係?

僕の顔見知りってたかが知れてる。

えーと、ララお姉ちゃんに姫さま、騎士さん、ミザリーさん。あと、宿屋のおばさんぐらいだ。


「あー1人不憫な子がいますねー。まあそれはさておき宣言しておきます。」


「は、はい。」



「私が‥この私が正妻ですからねー!!」


この神様は何を宣言しているんだろう。

特別仲のいい女性もいないのに、正妻とか。

よし、帰ろう。帰る帰る帰る帰る‥


「そ、そんな念じるなんて酷い、私との愛の育みがあっ‥」


無事、元の銅像前に戻れた。




最近は良い夢ばかり見ていたのに、久しぶりに四つん這いで僕を追いかけてくる神様の夢を見た。



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