小話 ドコ?ドコニイルノォ‥8



私はただいま王城にいます。

ソフィア様にお会いしたいとお手紙を送った後、すぐにお返事が来た。


そして、客間の一つである部屋に招かれています。

正面にはソフィア様。

紅茶を飲むその姿は絵になりますわね。


「ソフィア様、ご無事でなによりでした。」


「ありがとう、アリシア。貴方も元気そうでなによりです。王都には何しにいらしたの?」


「来年から通う王都の学園をお兄様に案内してもらおうと思いまして。」


「ふふ、私もアリシアと同じ学園に通うのよ。ですから、とても楽しみです。」


しばらくは友人との久しぶりの会話に華を咲かせた。

そろそろ本題を切り出しましょう。


「あ、あの実はお聞きしたんですが、なんでも盗賊から1人の冒険者に救ってもらったと。どのような方なんですか?」


「アリシアは相変わらず耳が早いですね。私を救ってくださったのは、私達と同い年ぐらいの男の子です。」


あ、当たりですわ!

滲み出る興奮を抑えないと


「そ、そうなんですの。それでそれで!」


「ど、どうしたの落ち着いて。その男の子は一見びくびくしていて頼りない雰囲気を醸し出しているのですが、目にも留まらぬ速さで盗賊を倒していきました。本当に、かっこよかったです。」


あの時の事を思い出すようにポーッと遠く見つめるソフィア様。


ま、まずいソフィア様が雌の顔に!


「それにですね」


「そ、それに‥」


思わず生唾を飲む。


「彼の着ぐるみ姿がとても愛らしくてたまらなかったです。」


恍惚とした表情を浮かべる。


き、着ぐるみ姿ですって!?

私もまだ見たことないのに、会えてすらいないのに‥。


「着ぐるみですか‥」


「はい、うさぎの着ぐるみです。うさ耳をユラユラしながら、黒髪の隙間からびくびくと様子を伺う姿。ぞくぞくと涎が止まりませんでした」


くぅーなんて羨ましい。

私も見たい。


「そ、それはとても羨ま‥いえなんでもございません。ところで、その冒険者の方はまだこちらに?」


「いいえ、ちょっと失敗してしまったの。あの手の子は強引に押し進めればいけると思ったんですが、押し切る前に逃げられてしまいました。」


「逃げられた?」


「ええ、少し強気に婚約を迫ったんです。やりすぎてしまいました。今は家族全員で反省中です。」


こ、婚約!?


「こ、婚約ですか‥」


「ええ、私が好きになったのも理由ですが、王族としてあれほどの逸材を逃す訳には行かないですからね」


私が出会うことにすら四苦八苦している間になんて羨まけしからんことに。


「さてどうやらアリシアと私はライバルみたいだけれどどうします?」


「ふ、ふぇっ!?」


「先ほどからの目まぐるしい表情の変化を見ていれば分かります。アリシアも彼とは知り合いで好きな人なのでしょう?」


知り合いというか一方的に知っているだけですが‥


「す、好きだなんて、わ私はただ以前助けて頂いたお礼をしたいだけですわ!そ、そうです!お礼ですわ!」


「ふふ、そう。でも、理由はどうあれ貴方が彼に会いたいなら私も協力するわ。お互い1人でやって逃げられてるんですもの。2人でやればより確実でしょ。」


ソフィア様は左手を差し出してくる。


私も黙って頷き、その手を握る。


この日、ただ一つの目的のため協定が結ばれた。

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