悲しさなど
兎角に人の世は住みにくい。
猫にでもなれたならば、あたたかな所でぼんやりして、煩わしい日々のあれこれに目をつぶっていられるのに。
本を閉じた私は、何でもなくテレビをつける。
つまらない。面白くない。
そうしてすぐに消したら、今度はスマートフォンを取り出してアプリを立ち上げては消す。
ごった返した情報は気分を悪くする。
無音になった七畳少しの部屋に、カップ一杯の白湯を持って、座り心地の良くない椅子にすわる。
外を走る車の音は途切れることがなく、それすらも聞きたくない。
気象の変化が体調を悪くする。
頭は痛いし手のつけられていない迫った仕事も気分の下降を助長するのだ。
こうやって書き留めていくことで何度も理解しているつもりなのだが、それでもどんよりとした心持ちは、一人の私の上に覆いかぶさる。
「おまえはなんてわるいにんげんだろうね」
囁く声が聞こえてくる。耳を閉じても響いてくる。
もし人間でなければ、猫であったなら、悪くなかったのだろうか。
寝る前の暗闇に落ちる瞬間は無に等しく死に最も近い。
悲しみは枕の下に入れ、一等素敵な思い出を取り出しては恍惚とするのだ。
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