第17話 俺、パーソナリティを知る

「もー、最初からそう言ってくだされば、いいんですよ。1話無駄にしちゃったじゃないですかっ!」


 女神のやつはとっても嬉しそうだった。るんるん、って感じだ。

 そのせいか、なんだかおっぱいも、いつもより、たゆんたゆん、てしている様に見える。


 しかし、俺はそんなおっぱいを見ても、この時、幸せな気持ちになれなかった。


 敗北感にさいなまされていたからだ。

 気のせいか、他の俺がこの俺を責める視線も感じる。


 だが、……誰が俺を責める資格があるんだよ?

 さっきの俺はとっても勇者だったと思うぞ、我ながら。

 魔剣の俺の言い方だと、ああいうのが格好いいんじゃないのか?

 あん?


「じゃあ、決めちゃいマスよ~。みなさん準備はいいかなー」

「いいともー」


 え?

 ちょっ……何だよ、魔召喚士の俺、いきなりのそのノリは?

 見ると、他の俺も同調してやがるな。


 お前ら俺じゃないの?

 いつの間にか、魔殺士の俺も戻ってきてるし。見えてるし。

 疎外感感じまくるぞ、俺。


 あーもうわかったよ、参加すればいいんだろっ!


「魔法さんから、紐さんまで1号さんから8号さん~」

「……」


 俺全員、沈黙。


 女神、お前何歳だ?

 オヤジの世代の仮面つけたバイク乗りじゃねえんだぞ。


 それからな……プリーズ個性……。


「あれ?ご不満ですか?」

「女神よ、数字だと単純なだけに混乱しやすい。それに服等に名前を書くときも、1と2と7は間違うかもしれないからな」


 魔法の俺ッ!ナイス!


 ……しかし、1と2と7って間違うか? お前の考えは高度過ぎて俺にはわかんねえわ、やっぱ。

 でも、グッジョブ!

 さっきのことは水に流すぜ。


「なるほど、数字が単純で覚えやすいかなーと思ったんですけどね。これは盲点でした」

「わかってくれて、嬉しいぞ、女神」


 女神の発言に、つ、ツッコみたい。

 でも我慢だ、俺。せっかく魔法の俺がなんとかしてくれたんだ。

 女神の機嫌また悪くなったら面倒だからな……。


「では、こうしますかね。あなたたちのパーソナリティで決めちゃいましょう」

「パーソナリティ……だと?」

「既にお気づきだと思いますが、あなた方はもともとお一人で、姿は同じでいらっしゃいます。ですが、チート能力の違いがあるのは当然として、他にも異なる属性があるんです。それがパーソナリティ。簡単な言葉で言うと、性格、ですかね」

「性格……か」


 思い当たりすぎる。同じ俺なのに、8人が違う俺なのはそこなんだな。

 だけど――


「なんで、性格、パーソナリティが違うんだ? 女神」


 そうそう、そこよ、魔法俺ちゃん! ドキドキ。


「それはですね。マギアムンドの崩壊を防ぐため、やむを得ずあなたを八つ裂きにした時に、魂が分かれてしまったようなんです」

「……」


 全てお前のせいかっ! 女神ッ!


 ……まあ、そうだとは思ってたけどな。

 最初に俺とラーメンに謝った時、こいつは自分の『誠意』ですら、分割できてたみたいだったからな、得意技なんだろう。


 何の役に立つんだよ、それ!

 八つ裂きじゃなくて、コピーにせんかい、コピーにっ!

 分身、ぶんしーん……今更言っても遅いわな。


「だから、せめて名前は丹精込めて授けます!」

「わかった……進めてくれ」


 まあ、今更だしな。


 職業ですらやり直しきかねえんだから、なおさらだ。

 シュプレヒコールを繰り返しても無意味なら、余計なことはせずに、運命を受け入れるのが正しい判断だろうな。

 魔法の俺が言ってるんだから間違いない、うん。


 しかし俺、本当にこいつのファンみたいに自分の意見180度ねじ曲げてんな。真面目にもはや信仰に近いかもな。


「では、まずは魔法のあなたから。あなたのパーソナリティは『知性』です。」

「光栄だな」


 何! マジこいつ頭脳俺だな。

 薄々というか、濃いめでわかっていたことではあるが、公認となるとやっぱり違って見えるぜ。


「そしてあなたのお名前は……でれでれでれでれでれでれ……」


 女神が水晶級を両手に抱えながらゆっくりと水平に小さく回すように動かしている。

 おい、お前、その小道具どこから出した?いつ出した?

 それから、なんか口で太鼓っぽい響きを出すのやめい!

 メンヘラ度に磨きがかかって見えるぞっ!


「ちーん、決まりました。あなたの魂のお名前は……」


 唾飲みこんだな。魔法の俺も流石に緊張してやがるぜ。

 俺じゃねえのに、俺もなんかドキドキしてきたなあ。


「『チッセ』です」

「……」

「どうしたんですか?」


 女神は疑問を浮かべた表情をして首を傾げている。

 魔法の俺は、考え込んだ顔してやがるな。

 チッセか……ちょっと可愛い過ぎるもんな。


「チェンジで!」

「……」

「だめか?」


 魔法の俺、意外に攻めるタイプだったんだな。

 だけどよ、この女神だ。

 いつもどおり、それは難しいというか、ダメっていうだろう。


「いいですよ」


 いいのかよっ!


 やっぱり頭良い奴は女にもてるっていうけど、本当らしいな。

 知性優遇はんたーい!

 いやだめか、こいつが心折れていなくなったら、俺のブレーンがいなくなることになるもんな。


「次なるあなたのお名前候補は……でれでれでれでれでれでれ……」


 気のせいか、台詞が少し変わっていやがる。

 芸細かいなー、女神様よっ。


「ちーん、決まりました。あなたの魂のお名前は……『セイ』です」

「……いいだろう」


 いい感じの名前もってかれたなー。

 ん? 名前ってストックあるのか? かぶりはNGだよな?

 まあ、その前にきっと、能力の壁がありそうだな……。


「しかし、何故に『セイ』なのだ?」

「ほら、知性、チ・セイで、頭のチを取って、『セイ』!」

「……ありがとう、女神」


 なるほど、ちせ・い、で『チッセ』。ち・せい、で『セイ』か。

 こいつ真面目に考えてこれもんなんか……。

 というか、あの水晶級、どう考えてもいらねえじゃんかよ!


「では、お次は魔剣のあなた!」


 俺が余計なことを考えている間に、やっかいな奴の番が回ってきたらしい。

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