人を殺しても救われない
人を殺しても救われない。そんな悲しい事実をそろそろ直視するべきだ。たとえば高卒無職三十二歳の山崎くんが将来を悲観して川崎駅前で通り魔を試みても、面白おかしく悲劇にされるだけで、世界は何も好転しないよ。
僕たちは殺されている。選択肢のない吉野家牛丼並盛り。金曜午後に降ってわく週明けの〆切。真っ暗なワンルーム。渡邉の結婚報告。日本学生支援機構からの最終督促状。そんなありふれた致命傷で僕たちはそろそろ死にそうだ。
救われたいと思っているのは、自分が虐げられていると感じているから。革命における犠牲が美しく許容されるように、僕たちが万能包丁を振りかざしても優しく肯定されることを望んでいる。ねえ。だけど僕たちは殺している。嫌だ嫌だと泣き叫ぶ自分自身を殺しているじゃないか。気づけよ、殺人鬼。
人を殺しても救われない。そんな現実を直視して、そろそろこのくそったれな日常を生きてみようか。もしも君がやりたいなら、世界征服くらいはつきあうよ。
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