マンドレイク15

月を眺める男がいた。


男の名はリヒャルト。


彼の物語を語る時間は、今はない。




隣には鋼鉄の四肢を持つ少女。


自らをわにクラカヂールと信じて疑わない。




ふたりは月を眺める。


周囲には彼の同志たち。




彼の夢を信じて集まったもの。


夢と化した彼に集うもの。




「諸君」


男が嘯く。皆が頷く。




「我々の目的はひとつ。そのためにこのロケットの街ミリオポリスへ集った」


少女は呟く。わたしはわにクラカヂール




へ征くぞ、諸君――“ゾルゲ機関”の設立は、そのためにこそ許される」




男の名は、リヒャルト。

リヒャルト・ゾルゲ。


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