Neжus《ネクサス》――魔女と魔法使いの異聞伝

田村優覬

○Primordia――起源●

魔女と魔法使いの異聞伝

 むか~し昔。

 それよりも、ず~っと昔。


 遥かいにしえの世間には、魔法使いと呼ばれる存在がいた。


 燃え盛る火をあやつったり、

 魅了する金を輝かせたり。


 淡麗たんれいたる水をもたらしたり、

 穏便たる緑を芽吹かせたり。


 自身の持つ魔法を最大限に活かし、主に困った人々を助けていた。

 それは笑顔に結びつき、後に幸福へ染め上げていた。


 人々と魔法使いの間に繋がりも生まれ、共存の未来も考えられた。

 魔法使いの存在を嫌う者などいなかったし、

 むしろ慈愛の精神に感謝していたから。



――魔女と呼ばれる存在が現れるまでは。



 魔女とは、人々に不幸を振り撒く存在として有名だった。


 有害な出会いを迫らせたり、

 危険な能力を与えたり。


 見ず知らずの場所へ連れていったり、

 恐ろしき悪魔に豹変したり。



 そして、生命を左右することだって……。



 魔女の存在をきっかけに、人々は魔法の存在を嫌悪した。

 それはすなわち、魔法使いまでも敵視するようになってしまった。


 魔法に恐怖し、混乱した人々。

 一方で、我が魔力と地位を守らんとする魔法使い。

 しかし、世間の見解を無視し極みを求める魔女。


 それぞれ異なる三つ巴の戦争状態を招くことになった。



 俗に言う、魔女狩りの始まりだ。



 敵の敵さえ敵だった時代。


 人々の犠牲は確かにあった。

 大量の血が流れ、河川や大地を染めるほど。


 しかし、もちろん魔法使いと魔女の数も激減。

 圧倒的に人口が少なかったため、限りなくゼロに近づいていた。



 いよいよ、魔女狩りの終焉が訪れた。



 人々は、魔女と魔法使いは全て消えたと思い込んでいた。

 町には影もなかったし、存在の噂も無くなったから。



 でも、世界にはまだ残っていた。




――寄りにも寄って、魔女たちが。





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