第63話 好の退院
そもそも好の欲しい物は俺には分からない。
当本人に聞けば良いかも知れないが、誕生日を察されては意味が無い。
つまり、簡単に言えば俺はカンで探すしか無いという事。
そこで俺は良いモノを見つけた。
日曜日。
俺は病院まで来てから病室をノックする。
そして返事を待った。
すると、好から元気な返事と共に病室が開いた。
そして俺を見て目を丸くする。
俺はそんな好に手を上げた。
「よお」
「.....えっと.....ど、どうしたの?和樹」
少しだけ赤面する、好。
俺もその事にちょっとだけ赤面した。
今日は7月5日だ。
それが好の誕生日。
日曜日に重なり、今日が当日だ。
俺は全ての準備をして物品を拵えてやって来た。
そして首を傾げている好にそれを出す。
「.....好。今日、誕生日だよな?」
「.....え.....あ、うん。誕生日だよ。忘れて無かったんだね」
「忘れるかよ。死んでも忘れない。.....えっとなお前に誕生日プレゼントが有る。.....だけど、誕生日プレゼントは一個じゃ無い」
「.....?」
今日は盛大に祝うぞと、俺はその様に好に話してから。
その大切な一年に一度のプレゼントを渡した。
特別製の、だ。
ハート型と矢の形をした、恋人同士のお揃いのネックレスだ。
それが良いかと思って、買ってきた。
余りにも臭いけど。
プレゼントを開ける好は子供の様だ。
そして開けてプレゼントのネックレスが2つ有る事を確認して好は見開いた。
取り敢えずは察した様だな。
俺はその言葉を笑顔で放った。
「.....誕生日おめでとう」
「.....どうしよう、和樹.....滅茶苦茶に嬉しいんだけど.....!!!!!」
「.....ハハッ」
俺は涙を流す好に笑みを浮かべる。
すると、好はピンク色の片方のネックレスを取って俺に渡してきた。
ピンクと青のネックレスだがピンクが好のだと悟ったのだろう。
俺は渡してくる行動に?を浮かべる。
「今、着けて.....和樹」
「.....あ、なるほど」
そのまま俺は華奢な首筋を見ながら。
赤面でネックレスを好に着けた。
そして真正面を向いた、好は.....。
ヒックヒックと嗚咽混じりで目に涙を浮かべて泣いていた。
「.....有難う.....本当に有難う.....和樹.....とっても嬉しい」
「.....どういたしまして。喜んでくれたなら.....良かった」
「それじゃあ、和樹にも着けてあげるね」
「あ.....ああ」
そして俺は少し恥じらいながら振り返って青のネックレスを着けてもらった。
お互いに似合っているネックレス。
特注なので、この世に1つしか無い。
意味は、愛を射抜くという意味を持っているネックレス。
俺は少しだけ恥じらいながら頭を掻いた。
すると、好がヨシッと言って。
「.....じゃあ、こっち向いて」
その様な声がした。
どうやら、着けた様だ。
俺は和かに真正面を向く。
その瞬間、目の前に紅潮した好の顔が。
チュッ
そのまま、俺達はキスを交わした。
暫く抱き合って、好は俺の唇から離れて。
俺に花の様な笑顔を見せた、好。
また抱きしめて来た。
「.....愛してる。和樹。.....私がお婆さんになっても愛してね」
「.....ああ、当然だ。お前を一生守るよ」
「.....そう言えば、プレゼント、もう一個って?」
その言葉に俺は目をパチクリして、しまった、と思った。
余りに幸せでクラスメイトを置いてけぼりにして。
俺はなんて野郎だ。
直ぐに俺は好に指示を出す。
「.....えっとな、そこの窓のカーテン開けてみろ」
好は俺の言葉に?を浮かべながらもカーテンを開ける。
そして、あ、という声と共に大声が外から聞こえた。
好に対しての応援団。
つまり.....。
「好ちゃーん!!!!!」
「水瀬ー!!!!!」
「元気になれよぉ!!!!!」
クラスメイト39名。
日曜日にも関わらず、クラス全員が駐車場に集まった。
そして目を丸くしている、好に応援を打ちかます。
担任も集まってくれた。
勿論、聖良も、三月も、輝夜も居る。
余りの衝撃なのだろう見開いている、好。
そして横を向き、俺を見てきた。
「.....か.....和樹.....これは?」
「.....誕生日を祝う為に病院の駐車場を借りた。それでみんなお前を祝う為に.....来てくれたんだ。.....好。今まで本当に頑張ったな」
涙目で膝を丸めた、好。
突然の事に俺は支える為に好に触れようとした。
すると、それは必要無いと言って。
震える声が聞こえた。
「.....和樹。私、生きていて良かったかも.....人生って本当に.....素晴らしいね.....」
「.....ああ」
「.....有難う。.....マジのマジに和樹.....幸せです」
「.....そうだな」
俺達は外で聞こえる、応援に手を振って答えた。
そしてニコッとしながら立っていると。
病室のドアが開き、そして誰か入って来た。
俺は首を傾げ、後ろを見る。
「.....?」
「水瀬好さん」
「.....病院長?」
予想外。
何故か癌専門の病院長、担当医の人達が花束を持って集まって来た。
看護師さんは涙目で立って居る。
一体.....何だこれは?と思っていると。
病院長の口から想定外の言葉が出た。
「.....今日で水瀬さんは.....退院する事が出来ます」
「.....!!!!?」
「.....え」
それはまさに雷に打たれた衝撃だった。
俺はマジ?と大声で言ってしまい。
好に至ってはその場で固まっている。
目をパチクリして、だ。
「.....で.....でも退院までまだ時間が掛かるって.....」
「確かにその様に話しました。ですが、今回の診断結果で水瀬さんは頑張って回復している、また、再発の恐れは無い。その様に判断しました。リハビリは当然に必要ですが、退院しても問題が無いかと」
「.....」
俺は泣いてしまった。
そして好が倒れた時を思い出す。
あの日、俺は地獄を見た。
そして全ての終わりを見た。
絶望を見た。
でもそれでも。
俺達は死に物狂いで.....頑張っていた.....事を。
初めて.....報われた気がした。
俺は涙を流して拭う。
「.....有難う.....和樹」
「俺は何もしてねぇ.....マジで良かった.....」
暫くして、友蔵さん、未知瑠さんがやって来て。
詳しい状況の説明になった。
俺は嬉しい渦に飲まれて、ただ涙を流していた。
好の退院が今日になるなんて、と思いながら、だ。
クラスメイト達の元へ駆け出して行く。
好の事を知らせたい。
そう思って。
そんな、好が病院を退院した日から。
俺達の日々は5年が経った。
今日は水瀬家、羽柴家の結婚式で有る。
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