第61話 ただ、有りのままに

三鶴城輝夜という名の少女。

二重の性格の少女。

俺は悲惨な過去を知って複雑な思いで考えていた。


もしかして.....いや。

多分、輝夜は虐めによって心の成長が遅れているんじゃ無いかとも思ってしまう。


「.....」


「.....お兄。大丈夫?」


トイレに行っている間、瑠衣が聞いてくる。

ただひたすらに心配していた。

俺はその瑠衣を見ながら俯いて、言葉を発する。


「.....どうしたら良いんだろうな」


「.....うん.....」


ただひたすらに.....輝夜の事を考える。

本当に何も思い浮かばない。

俺はアイツにどう接したら良いのだろうか。


「.....どうしたの」


「.....輝夜」


戻って来た輝夜は真顔でそう言った。

俺はその輝夜を見ながら少しだけ溜息をつく。

そして立ち上がる。


「.....輝夜。お前とはやはり付き合えない」


「.....じゃあ死ぬ」


「.....だけど、俺は絶対にお前を救える。いや、救ってやる」


輝夜は?を浮かべている様な感じだ。

コイツを家に呼ぶ。

そして仲間を、呼ぶ。

うん、計画は大丈夫だ。


「.....今から帰るぞ。お前も」


「.....何処に」


「.....お兄?」


「.....俺の家にだ。来い」


瑠衣が驚愕する。

それを横目に時計を見る。

もう時刻は18時を超えているが。


コイツを放って置くってか。

俺達だけじゃもう解決出来ない気がした。


「.....行っても良いの」


「.....お前を救うには温かさが居る。だから家に来い」


「.....そう」


その様に話して俺は手を取った。

そして歩き出す。

家に帰る為に、だ。

これしか無い。



「.....夜だから抜け出すのに苦労したぞ。お前.....」


「そうだぜ。和樹」


谷と火矢、そして聖良に好。

集合出来る奴らをみんな集合させた。

そして俺はそいつらを見ながら。


「.....すまん。どうしても会わせたい人が居てな」


『.....それって.....?』


「.....輝夜だ」


その言葉に全員がざわついた。

既にもう輝夜の事は知られている様だ。

俺はその事に頷いて。

そして輝夜をリビングに呼んだ。


瑠衣と共に輝夜が入って来る。

そして俺を見てきた。


「.....」


「.....」


「.....輝夜。座ってくれ」


輝夜は真顔のまま、腰掛ける。

そして目線だけ動かす。

その時だ。

聖良が睨みを効かせた。


「.....やっぱり許せないかも」


「.....聖良。落ち着け」


「.....でもコイツは里奈を.....貴方を.....!」


それは分かるが落ち着け。

俺はその様に目で訴えていると、聖良は納得してくれた様だ。

ふてぶてしくだが、座ってくれた。


「.....それで、どうして呼んだんだ。和樹」


「.....お前ら。輝夜の友達になってくれ」


谷の言葉に答える様に俺は話した。

衝撃の言葉だった様だ。

みんな見開いた。


「.....友達ってなれる訳.....」


「.....そうだぜ。コイツはお前を.....!」


周りがその様に話す。

それは当たり前の意見だな。

俺はその様に思いながら既に許可を取っているので輝夜を一瞥して全員に話をした。


「.....輝夜は深く傷を負っているんだ。それで.....過去もみんな悲惨で.....今から話すが.....」


「.....お兄.....」


「.....輝夜は根っからの悪い子じゃない。確かに悪いかも知れないが.....全てが悪い子じゃないんだ」


俺を見ながら、見開く輝夜。

その輝夜を見て、そして頷く。

頭を下げた。


「.....頼む」


「か、和樹.....」


「和樹くん.....」


すると、横から声がした。

輝夜で有る。

真正面を見て、話した。


「何でそこまでするの」


「.....それはお前を悪い子だと思って欲しくないからだ」


「.....」


少しだけ複雑そうな感じで。

俺を見てから。

視線から目を逸らした。

俺はそれを見てから輝夜を抱き締めた。


「.....お前を見過ごすのはヒーロー失格だと思っている。俺達はお前の母親や父親とは違う。だから悩みを吐き出すんだ」


「.....」


少しだけ肩が濡れた。

涙を流している様な感じを受けたが。

俺は敢えて見なかった。


「.....私は.....」


「.....大丈夫、大丈夫。輝夜は良い子だ」


「.....」


時間は掛かるかも知れない。

子供の様に縋ってくる輝夜を強く抱き締めた。

悩みを打ち明けてくれる事を祈ろう。

俺はその様に思い目を閉じた。

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