第49話 喧嘩、その後

三鶴城輝夜というクラスで最下位クラスの女の子。

かなり謎が多い少女だと思った。

俺は輝夜の事について話すべく病院にやって来てから目の前の好を見つめている。

そんな好は眉を顰めて顎に手を添えている。


それなりに衝撃を受けた様だ。

まあそうだろうな。


「.....うーん。まさかの展開だね.....」


「そうだな.....。輝夜がそんな事を隠していて.....まあ予想外だよ」


「.....でも、その傷とかは大丈夫だった?和樹は」


「俺は別に大丈夫だけど.....問題は輝夜と.....里奈だ」


そうだね、輝夜と里奈だね.....と呟く、好。

しかし今日はいつになく元気だな好。

話が少し脱線するが、俺は好に率直に聞いてみた。


「.....お前、かなり元気だな。どうした?」


「.....ん?あ、勿論、元気になるに決まっているじゃん。.....ね。聞いて和樹」


「.....?」


俺は首を傾げ、耳を傾ける。

すると、好が赤くなって笑顔で話し出した。

えへへと嬉しそうにはにかみながら、だ。


「たった1日だけだけど、今日の午前に担当医のお医者さんから外泊許可が下りたんだよ!明日.....土曜日に。.....これ以上に嬉しい事って無いよね!」


「.....え、マジでか?!」


「.....うん。だから.....」


直ぐに俺の唇が唇によって塞がれる。

そして離した後に、好がモジモジしながら俺を見上げてきた。

互いにちょっとだけ赤面する。


「.....また.....他の人に負けない.....デートしよ?」


「.....そうだな。今度はお前が側に居るんだ。これ以上のチャンスは無いな」


「.....そう。だから.....恋が成就する様に.....近所の恋で有名な寺に行きたいな.....ね?」


俺の手を優しく握ってくる、好。

潤んだ瞳を上げる。

俺は赤面しながらその事に笑みを見せて頭を.....撫でれないので、肩を撫でた。


「.....じゃあ、明日行こうか。好」


「.....うん。あ、で.....えっと.....そうだった。輝夜と里奈は大丈夫なの?」


「.....大丈夫.....とは言えないな。仲は完全にこじれたよ。でも俺は謝らない限りはまた友人にはならないと.....アイツには強く言ったけど」


当然で、当たり前の話だが。

相手に損害を与えておいて、それで呑気に友人は有り得ない。

それに輝夜はどれだけあっても一応、イジメっ子で有る。


その.....うん。

色々と考えなくてはいけない。

俺達に損害を与える可能性も考えられなくは無いからだ。


「.....そうだね」


「.....ああ」


取り敢えず.....日常生活を過ごして置けば良いと思う。

そして、何か有ったら直ぐに.....対処して潰そう。

俺はその様な感じで思った。



「お兄!大丈夫だった?.....その、聖良さんから聞いたけど!」


「.....ああ」


「大丈夫?和樹くん」


「ああ」


取り敢えず問題は無い。

これで何か問題が有ったらヤバイと思う。

俺はその様に考えながら玄関から床に上がった。


「.....取り敢えず、二人の仲が回復しないといけないと思う。だから.....お前らも協力してくれ。特に聖良。お前の存在はかなり重要だと思うから」


「.....うん」


このまま全てにおいて喧嘩腰では話にならないと思う。

まともな高校生活なんて送れないだろうし。

と思っていると、瑠衣が俺を見てきた。


「確か、好さん.....」


「ああ。一時的だが外に出れるぞ。1ヶ月ぶりぐらいかな」


「良かった.....ね。.....お兄!!!」


瑠衣が涙を流しながら、俺に勢い良く抱きつく。

それを俺は慌てて受け止めた。

なんと危ない。


「.....瑠衣。飛んだら駄目だって。お前まだ骨折してるんだから」


「.....あ。ご、ごめんなさい.....」


「でも、本当に良かったね。和樹くん.....」


「.....ああ」


俺は涙目の聖良を見る。

全くその通りだ、本当に良かったよ有る意味。

この一月で十年ぐらい過ぎた感覚だしな.....。


「大事にしなさいよ」


「そうそう。お兄」


「.....お前ら。からかうなって」


苦笑しながら、俺は見つめる。

瑠衣と聖良はクスクス笑う。

ところで気になったんだが.....。


「お前、まだ居て良いのか?」


「.....ん?.....あ、ああえっとね.....あともう少ししたら親と会話するよ」


「.....そうか。良かったよ」


「.....和樹くんのお陰だね」


何もしてない。

俺はその様に両手を上げてから見た。

聖良は首を振る。


「.....流石は私が狙っている重要な男の子、だね」


「.....!?」


「聖良さん!」


あはは、冗談だって、と言う聖良。

いや、冗談と言われても.....冗談が通用しない。

コイツは俺の事が好きと言っているからだ。


「.....聖良。何度も言うけど俺は.....」


「揺るがないんでしょ?うん。だから私達は.....お零れを狙うの。アハハ」


やれやれと俺はため息を吐く。

そして聖良、瑠衣を見てからリビングに入る。

そこには何故か、火矢が.....お茶を飲みながら居た。


「.....何やってんだお前!?」


「.....あ?る、瑠衣の事が心配になったから.....」


「.....え?確か違うよね?火矢くん」


「うるせえ!俺は.....その.....」


お兄の事が心配になってやって来たんだよ、と瑠衣が耳打ちしてきた。

おー、マジかよ。

俺は笑みを浮かべながら、火矢の頭をポンポンした。


「.....有難うな、火矢」


「か、勘違いすんな!お前の事なんか一ミリも心配してねぇよ!!!」


男の子ツンデレかよ。

俺はその様に苦笑いしながら、火矢を見る。

でも、真面目に感謝だな。


「.....火矢。有難う」


「.....はっ。お前のいつも考えるそのツラを見てるとうざったくなるから.....とっとと元気出せ。幸せにでもなれよ」


「.....おー、相変わらずの暴言を言うね。クソガキ」


「誰がクソだ。テメーぶっ殺すぞ」


だが、そんな中でも火矢は笑みを浮かべていた。

そのまま俺に手を差し出して来たので俺も手を差し出してぶっ叩く。

そして俺達は笑んだ。


色々有るが、本当に幸せな人生をようやっと歩み出したな俺は。

その様に思いつつ、明日のデートを楽しみにしつつ。

ソファに腰掛けた。

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