第102話 決戦!二柱の大邪神と救世の志士達!
次いで各目標へと散らばるは、彼らと絆を繋ぎし支える者達。
迎え撃つは二柱の大邪神——
しかし門なる神の全長たるや、
対して這い寄る混沌は、ここまでのあらゆる策を一柱で弄した謀略の邪神である。
その邪神相手に
それは因果の呪いたる混沌——その渦中へ捕らわれた、古の神格存在ルルイエの魂を救い出すと言う想像を超えた策であった。
『ああ、絶望的です! ええ、絶望的ですとも! もはや我が儀は完成間近……その次元壁の先では百億を超える同胞が、審判の時を今かと待ち詫びて——』
「うっせぇな、黙ってろ……この混沌ヤロウ! そこにいるんだろ、
発せられる言葉が、眼前の少女然とした体躯からではない……高位次元から強制的に干渉を強いる別の存在からのものと察したから。
『……わた、しの……名を? あなた……は? 』
当主の呼び掛けはただの言語による響きではない、
〈
「俺の名前は
「だから少し辛いが待っててくれ! 俺と、共にある仲間達がその因果の
力の限り救世の当主が吼える。
今も閃光となりて、そこへ向かう彼らを阻む様に展開する尖兵を……
「この、お前らの相手はしてられねぇ! 邪魔、すんなっ! ルルイエっ……あんたは十分戦った! ならもう……素直になってもいいんだ! あんたの想いを聞かせてくれっ!! 」
『私の……想い。私、は……——たい。永劫の因果の地獄から……救われたい。助けて……助けて、
響く声音は
その存在が今……幾億の時を超えて、ようやく己の心を曝け出す事が出来た。
救世の志士達にとって、今はたったその一言を得られただけで充分であった。
「へへっ……それが聞けただけで充分――行こうぜ、シエラさん! アリスも今さら
『あなたは変わらないわね……。ええ、行きましょう。そんなあなたがいたからこそ、今の私達がいる……そうでしょう?アリス。』
『ええ……その通り。ありがとう、シエラ――そして
救生の当主の声に罪越えし少佐と元観測者が応える。
少佐としてもこの戦い当初は、当主と幾度も対立し衝突もした。
が――今はそれこそが、この瞬間のために必要であったと心に刻み込んでいた。
何の事はない――彼女も、そして友人たる元観測者もそれで心が救われたのだから。
『キヒヒヒッ! キヒヒヒヒヒヒヒヒッ!! 人類、人類人類……人類がっっ!! もはや審判を覆す事など出来ないのです! ええ、出来ないのですよ! 罪深き知恵の実を喰らい、狂える因果を呼び込む原因を生んだのはあなた方なのですから!! 』
膨れ上がる狂気と供に、宇宙を繋ぐ儀の完成を控え……
だが門なる神から溢れ出る狂気の奔流は、かの者へも影響を及ぼし――混沌の禍々しき様相がさらなる狂気で覆われる。
体躯もさらに一回り巨大化したそれは、二柱の因果の機体を相手取るため
「さあ、これより最終ラウンドです! 足掻き、苦しみ、憎悪に苛まれながらその生涯を邪神への供物として捧げなさい! ジ・ン・ル・イ・ガーーーーーーッッッ!! 」
異様なまでに広げた狂気の翼が次元さえも歪曲させ――
希望の二柱の存在と絡み合う様に……接敵した。
§ § §
それぞれが向かう先へと散った救生の志士達は、次々門より呼び込まれる尖兵を穿ちながら飛ぶ。
「よいか、アルベルト! 我等でこのヨグ=ソトースの東西方面をそれぞれで穿つ! 抜かるなよっ!? 」
『誰に言葉を向けている! この魔王アルベルト……数多の魔族の同胞の未来さえもかかるこの一世一代の大勝負で、手抜きなど言語道断! この程度の邪神に遅れを取る様では、魔界創生に
「ふっ……では私も、その魔界創生とやらに拘わった偉大なる存在との――時を越えた共闘を楽しもうではないか! 」
その機体内でのやり取りはすでに、長く供に戦った戦友のそれ。
「エルハンド卿と魔王殿は単機での突撃も叶います! しかし我等はそれらよりも一撃に劣る――ならばやるべき事は一つです! 」
さらに門の中心より下方へ向かうは、
四人を纏める様に飛ぶ
『言わずもがなだ、シャルージェ卿! 邪神のお二方も……この最後の戦い、今一度 共闘願おう! 』
長身と短身の銃砲で近接し、蝙蝠型ビット兵装で閃条をばら撒く
『ここまで来たんだ! 一蓮托生……ふむ――この言葉も良きかな、良きかな! 後はヨグ=ソトースを供に屠るだけだっ! 』
『その気概だけは買うけどね、この燃えカス! 計測などせずとも理解に足る程に、圧倒的サイズ差を無き物にするのは骨が折れるぞっ!? 』
さらに飛ぶ通信は二柱の邪神娘。
余裕さえ浮かべる炎の化身に対し、絶望的なまでのサイズ差に嫌な汗を躍らせる黄衣の王。
言うに及ばず、他の霊格機動兵装の30mを越えるサイズでさえ点に見える状況で10mに満たぬ
だが――
「お二方もシューディゲル卿も……秘めたる霊格は機体を遥かに上回る! なればこの守護宗家が生み出した、元来霊格コアを据える前提で開発されたタケミカヅチが力を発揮します! ならば――」
「この力を結集させれば……見た目ばかり巨大な邪神如き、相手ではありません! 」
口角を上げて咆哮を上げるは魔剣の侍女。
彼女とて邪神らに及ばずとも、人ならざる時の中を生きる者。
眼前の人ならざる者達の戦略的霊格総量さえも見抜いていた。
モニター先で、受けた賛美へ同じく口角を上げる人ならざる者達が一斉に気炎を纏うと――
非現実的なまでのサイズ差を物ともせぬ気概を
そしてその対角線上では――
「ヴァルキュリアで波状攻撃の後、私達ドレッド・ノートの連携でヨグ=ソトースへと接敵します! 皆、続いて! 」
その号令で、
『うっひょ~~! なんかアイリスが、
『やはりマスター方と長く共にあったアイリスは、一味違いますわ。』
『そうだね。僕達もなんだか戦う力が沸いて来る様だよ、アイリス。』
「も、もう! からかわないで下さい、三人とも! 」
少女の変貌した様は、
素敵な家族の素敵な進化へ歓喜に沸く
『はわわわっ!? 前、前を見るのですぅ!? 尖兵の大群が、こちら目掛けて押し寄せて来てるのですぅ! 』
『あ~~てかこの数はヤバイね~~!倒した数の~~比じゃないよ~~!? 』
そんな中……
そんな事はすでに承知と……モニターで敵状況を確認した少女達は、続いて視線を合わせ首肯しあう。
「もはや猶予もない所——けれどあのナイアルラトホテップから、
「では行きますっ!
六機の
程なく門なる邪神を形成する歪な巨大リングの四方箇各所で、爆轟が次々花開いた。
人類の存亡を懸けた大戦は、遂に佳境へと突入して行く。
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