第48話 起死回生!人ならざる少女達!
「チーフっ!もうこのままじゃ扉が持ちません!」
『ガタガタ抜かすなっ、ケケケッ!そのための取って置きを準備してんだ!持たせろ!』
「あ……アイ、マム!」
三体の邪神を相手取る
が……すでに拠点襲撃部隊である
実質
そんな場所へ邪神生命が直接的に侵入を試みれば、危機的現状は明白であったのだ。
兵士用携帯型対魔兵装として、研究員へも銃火器が配備されるが……そんな物で邪神が屠れる様な甘い現実などはどこにも存在していない。
だが邪神生命相手に持つはずもなく、機関内の防衛線である最終ライン――格納施設大扉前を脅かされていた。
「ケケッ……デカ物兵装は確かに選ばれた者しか動かせねぇ!だがよ――こちとら技術研究者って言う意地があるんだぜぇ、ケケケッ!」
「何の備えもなしにこんな無茶な作戦は立てねぇ……ぜっ!」
研究員に大扉外の死守を任せた残念チーフは一人格納庫に閉じこもる。
それも10mにも満たぬ人型に近しい機械設備の中に篭っていた。
否――それは10m前後に収められた人型の機動兵装。
言わば、機関内部での防衛に於ける最終ライン死守のため……チーフ自らが陣頭指揮を取って整備したそれであった。
「基本的建造構想は草薙宗家提供の急造だが――〈
外装骨格は試作段階であり、決して強固とは言い難い申し訳程度の軽装甲。
しかしこの危機的状況を先延ばしにする程度の非常戦力を、残念チーフが突貫で間に合わせていたのだ。
「だが問題は、だ。このあたし……技術研究と整備でチーフを兼任するこのあたしは、機械兵装の操縦経験なんざこれっぽっちもない事だぜっ!ケケケケッ!」
自虐的な叫びと供に
彼女とて、己が操縦者に不向きな事は百も承知である。
しかし救世の当主より託された想いは、残念と呼び称された女性にさえ希望を刻んでいたのだ。
『チーフっ……扉がっ!?』
「よっしゃっ、ケケケケッ!いいぜ、扉を開けろ!弾幕を張る……お前ら巻き添えを食らうなよっ!!」
立ち上がる小型機動兵装 〈タケミカヅチ〉が、備えた対魔弾倉装填済みガトリングを狙いすまして唸りを上げる。
機関員も残念チーフの合図に待ってましたと機密式大扉を開けた。
排圧と共に大扉が開かれた先には、
「ケケッ、一体ずつ各個撃破ができれば御の字と思ってたが……まさか数体まとめてたぁ——こりゃあたしも肝据ないといけねぇか!?まあいい——」
「ここはトリガーハッピーよろしく、全弾くれてやる!釣りはいらねぇ、持っていきやがれっっ!!」
襲う狂気に怯まぬ一進一退はまさに佳境。
バラ撒かれる薬莢に逃げ惑う機関員と、邪神生命相手に弱小な小型機体で挑む研究者であり整備主任である女性。
轟音を閃光に変えて打ち出された対魔弾の嵐が、邪神生命の肉体を捉えた。
まさに潰えぬ意志こそが希望であると、猛る空気が機関員達を包んでいた。
——僅か十数分の時を過ぎるまでは——
§ § §
邪神生命。
それが通り抜けた場所へ、八本の鋭い機械とも有機体とも取れる爪の穿つ穿孔が続いていた。
そう……そこは、今の今まで
「チーフっ!バーミキュラチーフっ!返事をして下さい!チーフ——」
『っせえな、ケケッ。……くっ——ああ、ちと出血が酷いがまだ息はあるぜ。だから、通信機越しに……がなるな。』
「出血って……!?チーフっ!!」
守りを固めていたはずのそれは通路の脇へと弾き飛ばされ、着の身着のままで機体に搭乗せざるを得なかった残念チーフは——
弾き飛ばされた衝撃により、コックピット内部で激しく打ち付けられ負傷していた。
そんな死に体の兵装には目もくれぬ
が——自分達を鼓舞し、先陣を切って負傷したチーフを蔑ろにする機関員達ではなかった。
「おいっ!お前達はチーフを救出だ!俺達であの化け物共を食い止めてやる!」
機関員総出で対魔弾装填済み自動小銃を構え、ある者は残念チーフ救出に……そしてある者は機関を纏める
「こちら整備区画前通路!タケミカヅチを機動させたバーミキュラチーフが応戦も、機体ごと弾き飛ばされて負傷した模様!これよりチーフの救出を開始!同時に我らで邪神生命を食い止めます!」
『タケミカヅチをしても、守りを抜かれただと!?いや……それよりチーフの容体は!?それに君達が生身では——』
通信先より盾の局長からの悲痛なる言葉が響き渡る。
整備区画は格納庫を経て
あの神秘と恐怖を植え付けて来る、三本の柱が聳える場所へと繋がっているのだ。
〈
その中枢へ機関内からは
詰まる所、絶対絶命である。
それでも揺るがぬ意志で戦いを諦めぬ機関員達の双眸へ……やがてそれは映り込んだ。
中枢へと伸びる長大な通路奥より、眩き光が走り抜ける。
反応した邪神生命は足を止め——窮地である機関員達すらも、突如として起こった事態に思考が停止した。
直後——
『観測者 アリスの許可を確認。これよりヒュペルボレオス内部に於ける、
「防衛システム……アリス・ネットワーク?ま……まさか——」
窮地を戦い続ける者達は、
そして徐々に高鳴る鼓動が希望へと変換され――
さらに響いた声で、機関員は起死回生の瞬間を思い描く事となった。
「ふふ、凄いね……この時代の人類は。こんな状況下でも諦めないなんて。これはあのアイリスが親身になるのも分かる気がするよ。」
「そうですわね。あら、すでにアトラック・ナクアがこの様な所まで。ならば容赦など必要はありませんわね。」
「なっ……君達、は!?」
立ち
あの
一人はプラチナブロンドヘアーを大きな二房の三つ編みで結う姿。
切れ長の双眸に薄い黄を輝かせ——パーソナルカラーはアイリスとは異なる黒を基調とした黄色と白を部分的に配する。
もう一人はダークブラウンの肩口へ切り揃えられた御髪に、おっとりとした双眸へ揺るがぬ芯を宿す。
パーソナルカラーはダークブラウンを基調とし、キャメルブラウンと白を配していた。
機関員の言葉へ、振り向くそれぞれがフリルスカート両端を上げつつ……さらりと
「僕の名はライトニング……ライトニング・ウィンベルケール。〈
「
それはその場が窮地である事も置き去りにする、舞踏会前の自己紹介の如し。
しかし邪神生命はそんなものは御構い無しと、停止していた進撃を開始した。
だがその無粋に苛立ちを覚えた、二人の
「なんだい?君達。僕達の挨拶を邪魔立てするなんて不届き極まりないね。ならば——」
「ええ、キツイお仕置きが必要と、
刹那……
負けじと
「では、マグニア——」
「ええ、心得ましてよ?」
「「
まさに邪神生命の侵攻が絶対防衛ラインを侵さんとしたその時……遂にその覚醒に至った
人類の反撃が、開始されたのだ——
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