第11話 草薙流の名の元に
「
「あと30秒……25秒で――」
すでに機動制空兵装の3割が中破により帰還。
残る
そもそも
まさにそれを抑え切っていたのは、騒がしく頼りがない様に見えた三人娘の管制制御に於ける順応性の賜物であった。
多分にそこへ、深淵が齎すとされる狂気の浸蝕に対する鈍感さと事を深く考えぬ思考が影響していた。
『だめっ……!局長これ以上は私達でも――』
防衛線最終ラインを死守していた
その
刹那――
『三神守護宗家が草薙家、裏門当主――
「……っ!?そちらが間に合ったかっ!」
§ § §
『草薙君、あなた何を考えているの!?クロスレンジは精神汚染の恐れがある!距離を取って火線砲で迎撃を――』
「ざけんなっ!見るからにエネルギーバカ食いする火線砲……こんなので立ち回ってたらこっちが落とされるだろ!それに――」
「精神汚染か、なるほど!こいつらが親父の話してた邪神の尖兵ってのは理解した――けどこいつは……この精神汚染とやらは――」
俺を包むのは半全天型の視野を持つモニター。
そして座するは何か妙な形のコックピットシート。
一先ず機体制御の根本の所は、アイリスがサポートしてる感じってのは理解した。
「アイリスっ、このシート変な形してねぇか!?何か仕掛けでもあるんだろ!あのシエラって女の言う様に、クロスレンジ――それも拳で直ってのは、確かにマズイ!」
モニター眼前でこちらを支援する様に舞い飛ぶは、シエラとやらが属する機関からの防衛兵装だろう――乱れぬ統制で接敵するそれらと深淵が遣わしたと言われる異形のばら撒く十字砲火は、下手な戦争のレベルを軽く凌駕していた。
精神汚染は兎も角としても、この状況で武器も無しのステゴロでは優位も何もあったもんじゃない。
だからと言って新たな相棒が脇に構えた超射程の火線砲――まるで燃料バカ食いドッカンターボか…… 一昔前のスポーツカー並みの扱い辛さは全く戦況にマッチしていなかった。
『よくお分かりですね、マスター。それはマスターが搭乗する事前提で調整されたと、メインデータで確認しました。つまりは――』
『マスターが得意とする戦闘形態へ移行するための、特異なシート形状となります。』
「……それはすげぇな(汗)って事は――こいつに俺が宗家へ置きっ放しにしてたアレ……積み込んやがるな!?」
俺の問いへ嬉々として答えるアイリスは、余程彼女の正規の名前呼称が嬉しかったんだろう――さっきから頬を紅潮させたままの明るい声色で通信して来る。
それだけで、何か小さな妹でも出来た様な暖かさが俺を包んでいた。
同時に――
深淵とやらを最初にワンパンで破壊した時、恐ろしく暗い情念の様なモノが流れ込んで来るのを確かに感じたが――アイリスの笑顔を見ていると、何だかそれも吹き飛んだ。
そのまま続けた俺の言葉に、モニター先で頷くアイリスがさらに続ける。
『センターコンソールの下部をご覧下さい。そちらへマスターの得物をすでに配置しています。そしてそれをオルディウスの機体サイズへと物質化させる事で、当面の主武装となる低エネルギー消費兵装が使用可能です。さらには――』
『その武装で戦うに当たって、マスターの身に付けた御業が反映され易い様――シートが一部オミットされ、直立状態での機体制御を可能とします。』
「俺専用な時点で想像出来たけど……流石に想定外――」
などと暢気に機体説明を受けていると、すでに大型個体に加え小型のナイトゴーント十機程度が竜星機を取り囲みはじめ――
「……って、悠長な事は言ってられねぇな!アイリスっ、その武装起動方法を教えてくれ!」
『
「戦闘スタイルと武装展開イメージ……こうか!」
取り囲むやすぐさま熱光球と熱線の猛威を振るうナイトゴーント群を、機体出力に任せ強引に振り切り――アイリスの説明通りにイメージを膨らませる。
直後……オルディウスの双眸へ煌く蒼閃光が強く灯ると、コンソールが分割され――そこへ備わっていたのは、俺が宗家へ置き去りにした草薙当主が代々受け継ぐ最強の霊剣だった。
「くっそ……マジで備え付けられてやがる。間違いなくこれは【アメノムラクモ】――草薙当主が受け継ぐ、天津神の魂宿せし三種の神器だ!」
俺専用な上、こいつが機体にある時点で――どう考えても身内の仕業と確信し嘆息する。
が、
その意志のままアメノムラクモの柄に手を置くと――
機体眼前へ現れたのは体躯に匹敵するサイズの五芒星。
そしてモニター脇へ投影された二つの五芒星が、それぞれ別々のスペルで俺の視界を占拠する。
「――そう来たか!アイリス!」
『はい!それらを重ね合わせる様に念じれば、武装の物質化が始まります!』
左手に浮かぶは邪神に対抗する旧神が齎す
あらかたが想像出来た俺はアイリスの言葉通りに、己が振るう武装展開を開始する。
「行くぞ、オルディウス!武装展開、アメノムラクモ顕現!――戦闘スタイル、草薙流閃武闘術っ……抜刀っっ!!」
モニターの五芒星が、コンソールに突き立てられるアメノムラクモの柄の上部で一つとなると――オルディウス眼前の五芒星から機体サイズの武装が顕現した。
「さあ、ここからは俺達の番だっ!三神守護宗家が草薙家、裏門当主――
鞘ごと備わる霊剣を腰へと据え、刀身をスラリと抜き放つと反応したシートが形状を変化させる。
同時にその動きと連動した機体が、眼前の顕現を終えた
俺と
そして俺は構えたアメノムラクモで、草薙流に於ける対魔専門の討滅奥義に
§ § §
草薙のSPが駆るマセラティに揺られる私は、そこに備わる特殊任務用モニターに目を奪われた。
当然だ——視界を占拠する機体の動きが、私の搭乗していた時の比では無かったから。
言うなれば電光石火。
機体が持つ総出力ではまだ上がある様に感じるが、すでに先の的になる様な鈍重さが皆無。
何より——
『シエラさんとやら……こいつは邪魔だから外すぜ!後で組織か何かに拾わせてくれ!』
「ばっ……!?それ無しで……刀剣一本で何が出来ると——」
目を疑うのは、突如として
それは日本国で言う刀を模した、片刃の鋭き煌めきを宿す武装……当然私が登場した時には、そんな機能をどこにも確認していなかった。
だが直接深淵に接触する訳ではないとは言え、クロスレンジの白兵戦に違いは無く……彼へ再び、機体直通携帯端末から忠告を投げようとした——
その私が注視するモニター映像で、ナイトゴーントが一瞬にして切り裂かれ……否——取り囲む全機が片っ端から真っ二つに両断された。
「な……んて、攻撃力!?」
火線砲を近くの人気がない区画へ下ろした
刀剣を
同時に私も理解せざるを得なかった。
彼が竜星機に選ばれたのではない——最初から竜星機は彼の物であったと言う事実を。
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