第51話 学校ダルい……行かなくちゃダメ?

〈登場人物〉

マイ……中学1年生の女の子。色んなことに腹を立てるお年頃。

ヒツジ……人語を解すヌイグルミ。舌鋒鋭め。

〈時〉

夏休みが明けそうな頃



マイ「はぁ……休み明け、学校に行くの本当にダルい。もうずっと休みでいいじゃん。このまま学校に隕石でも降って、全部なくなっちゃえばいいのになあ」


ヒツジ「休みたければ休めばいいだろう。誰も無理やりお前を学校に連れて行こうとはしない」


マイ「えっ、でも、義務教育なんだから行かなくちゃダメでしょ?」


ヒツジ「お前は『義務教育』の『義務』という言葉の意味を勘違いしているな」


マイ「勘違いってどういうこと?」


ヒツジ「『義務教育』の『義務』というのは、子どもが学校に通わなければいけない義務ではなくて、親が子どもを学校に通わせなければいけない義務のことを指す。子どもには学校に行く義務はないんだ」


マイ「ええっ!? そうなの!? 知らなかった……。これまで習ったことないけど、そういうのっていつ習うの?」


ヒツジ「おそらく、中学3年の社会における『公民』という分野で習うだろ、義務教育が終わる直前にな」


マイ「そ、そんなの卑怯じゃん! 義務教育が終わりそうな最後の最後に教わるなんて!」


ヒツジ「よくできているよな。義務があると思わせて、義務を果たさせて、その義務が終わる頃に、実は義務はありませんでしたと教えてくれるわけだ」


マイ「ムカつくー……あのさ、もしかしてさあ、そういうのって他にもあるの?」


ヒツジ「たくさんある。たとえば、会社員は健康診断を受けなければならないと思われているが、そんな義務はない。会社が従業員に受けさせる義務があるだけだ。町内会や自治会には入らないといけないと思われているが、これに関しては、そういう義務自体がそもそも誰にも存在しない。結局、これは『個人の自由』という考え方がまずあって、個人というのはできるだけ制限されてはならず、『義務』というのは本当に必要最小限にとどめなければいけない、と考えられているからだ」


マイ「なんか、学校に行っても行かなくてもいいんだって考えると、ちょっと気が楽になってきた……」


ヒツジ「もし、誰かに『義務だ』と言われたら、本当にそんな義務があるのかどうか、調べてみた方がいい。無いと分かれば、余計なストレスも減ることだろう」

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