民話とか草紙とかおとぎ話みたいなものが好きなんだな

 好きなんです。それで最近『トランスヒューマンガンマ線バースト童話集』とか『紙の動物園』とかを読みながら、昔草紙を現代風に描き直す試みがユニークでよい。というのを感じていた。ので自分でもやってみた。つもり。これはむずい。


 昔話の特性として「無名の主人公」つまり村人Aであったり若人A、老人A、不特定多数が時代や舞台を詳しく説明されないまま語られる。というのが挙げられると思う。(太郎シリーズとか姫シリーズは例外としといてくださいな。無名の主人公が知己で成り上がるとか、英雄譚に分類されると思うんだけど、私はもっと地味な話が好きなんだ笑)これがむずいんだ。どこまで語らずにおれるかというの、チキンレースであるな。それでまぁ、自分で書いたものを短編集にあげた。


蜘蛛の糸

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886173491/episodes/1177354054889550527

 

 蜘蛛の恩返しと言う筋立て。以前他のファンタジー作品で蜘蛛の糸で衣装を紡ぐ描写を使い、気に入っていた。蜘蛛好きなんですよ。エレガント。足が八つもあるなんて素敵ね。目までたくさんあるの? まぁなんてこと。陸上のカニ。エビ。オクトパス。よく足が絡まらないものだなー。


 蜘蛛の糸って吐き出すときに意外と繊細な作業がなされている。お尻からものすごいテンションをかけて絞り出されたタンパク質は一気に硬化、しかも吐き出せる種類は一種類じゃあないのだぜ。高い粘度を誇る狩り用の糸と自身の体重を支える命綱、巣の芯に使う強度の高い糸などを巧みに操る蜘蛛を、人間の意のままに糸を吐かせるようにするなど至難の業、蚕のようにはいかないのだ。


 しかしそこは物語だから蜘蛛の糸から織物織っちゃうよね。鶴の羽より可能性ありそうでしょ素材としては。というご都合展開。


 うーん物語のリアリティと寓話性というか、物語性は同時に担保できない。あかんですよ。バランスが難しい。細部を書き込むとリーダビリティと言うか、訴求性が落ち込む気がする。

 

 うまいこと感情を落とし込むバランスも難しい。幼いころ読んで親しんでいた童話がいかに優れていたか今更ながら思い知る。情報を伝えるバランスと、うーん。むずかしいな。それにオチの付け方もとても難しかった。勧進帳悪、振出しに戻るパターン、出自の高貴な人が貧しい目に遭い名声を回復するパターン。昔話には優れたひな形がたくさんあるものの。

 もののね。難しいね。


 私は干した魚を売り歩く行商の男が美しい娘についていくとそこは山姥の住処で、食われそうになりつつ、山姥を辛くも退治する話が好きなんだけど、その話の人形劇のバージョン、最後に男が山姥を弔うシーンがあるんだよね。そこに愛情を感じてしまって切ないから好きなんだよ。

 山姥は人を食う。食われたくないから騙して殺してしまう。弔いのために花を手向ける。それだけの話がすごく好きなんだよね。昔話のシンプルさが、かえって想像力をかきたてて、怖いし悲しいし切ない。


 よくできた話は筋が単純で、感情が大きく揺さぶられるんだよなぁ。自然の怖さとかありがたみとか、短い話の中に濃縮されている。読みやすくて濃い話が書いてみたいものです。単純に悪者を退治して安心、みたいな話は苦手だな。


 




 とか思いながら書いて、読み返して、していたら、noteでまるっきり片思いだと思っていた書き手の人が褒めてくれて驚いた。好き好き言うのは好きなんだけど、好きって返ってくるとびっくりしてしまうというか、うわー! お目汚しすいませんでした! と言う気持ちになる。ガンのサバイバーさんなのだけど、育児エッセイとか素敵に綴られている方で。漫画も文章も優しくて読むだけでほっこり心が温かくなるというかね。強くなれる気がする。ときどきコメントを寄せたりスキを押してたりしてたんだけどね。まさかこっちにきて読んでもらえるとは思わないから。恥ずかしいね。この恥ずかしいは、面はゆいとかそういう意味だよ。


 

 基本的に全人類にミュートされてると思って生きてるから、たまにリアクションがあるとびっくりするんだよな。いいのよ私のことなんかいつ忘れてくれたって。思い出した時で、いいのよ。(とはいえたまに思い出していただけると嬉しいです)


 

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