古時計
菅原 龍飛
プロローグ
夜、私はベットの中で丸くなっていた。夜の風が窓をガタガタ鳴らす。いや、それは夜の風みたいなやさしいものじゃなかった。お父さんが言うには、どうやら村に「
そうだ、おじいちゃんのとこにいこう。そしてなにかむかしばなしを聞かせてもらおう。おじいちゃんのむかしばなしはどれも面白いから寝れるはずだ。あれ?面白かったら聞いちゃって眠れないじゃん。あ、でも、ほら。眠れなくてもおじいちゃんのところにいれば心配しなくていいじゃない。うん、さすが私。我ながらいいアイデアだ。
私は枕を持ってベットを飛び出した。
夜の暗い廊下はいつでも怖い。お母さんはいつも、もう一人でトイレ行けるでしょ、と言ってくる。行けるけど、怖い。何かが怖いと言うのとかじゃなくて、なんか怖い。そんな暗い廊下を壁に触れながら歩いていくと、すぐにおじいちゃんの部屋にたどり着いた。ちなみにその隣がトイレ。……先にトイレに行っておこう。それにしてもこんなときだけ、うちが狭い家でよかったと思うのはなんでだろう。
トイレを済ませておじいちゃんの部屋に入ると、ベットのところだけ明かりがついていた。
どうやらまだ起きているみたい。よかった、わざわざ起こさないで済んだ。
私が入ってきたことに気づいていたのか、おじいちゃんは「こっちにおいで」と言った。
壁を触りながらおじいちゃんのそばまで行くと、私の顔を見て、おじいちゃんはなんとも言えない顔をしながらほほえんだ。
“おじいちゃん、むかしばなしをして。私ね、おじいちゃんのお話好きよ。……やった!してくれるのね!今日はなんのお話?……ごめんなさい、少しだけ声小さくするね。……それで、なんのお話なの?”
おじいちゃんは少し考えていた。そして、壁に掛けてある大きな古時計を見た。私には暗くて何時かまではよく見えない。
「十一時か。……これも何かの縁かい……よ……」おじいちゃんは小さな声で言ったから私にはなんて言ったかわからなかった。
“おじいちゃん、いま、なんて言ったの?”
「……ん?おお、すまんの。今日はな、ワシがスイバより──うむ、君のお母さんより──ちょっと若いときの話をしようかの」
さあ、今日の話も面白いかな。おじいちゃんはどこか遠くを見るような顔つきになった。
「昔の話だ─」
雨が激しく窓を叩き始めた。
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