愚神の恋の果て

真義

序文 創世神話

【創世神話】



 この世を創られた神様

 唯一の神様

 偉大なる神様は


 この素晴らしい世界のために

 続いて

 二人の『男』を創られました


 一人は『泥』から創られ

 もう一人は『石』から創られました


 『泥の男』も『石の男』も

 この世のあまりの素晴らしさに驚いて

 世界を創られた神様を心から崇めました


 慈しみ深い神様はそれを喜ばれ

 二人におくりものをしようとお考えになりました




 そして神様は二人の前に

 それは美しい姿をした『女』を連れてくると


 好きな方を選びなさい


 と、おっしゃいました




 ハヴァは『生命』の神秘を携え

 選んだものに『生命』と『死』を与えます

 命は生まれては絶える、

 それは儚くも輝かしい、きらめきの在り方


 アルマーは『創造』の御業を携え

 選んだものに『創造』と『滅び』を与えます

 創られ、継がれゆく物は

 忘れられ滅ぶその日まで、悠久の時と共に




 『泥の男』はハヴァを選びました


 ハヴァは『女』に『生命』を孕ませ、産ませる方法を『泥の男』に教え、

 二人は子どもを産むことでこの世に増えていきました




 『石の男』はアルマーを選びました


 アルマーは神様の御業たる『創造』について『石の男』に教え、

 二人は同族を造り出すことでこの世に増えていきました




 こうして『泥の男』とハヴァは『生命の民』となりました

 彼らと子孫は植物や動物といったあらゆる『生命』の主人となり

 植物を育て刈り入れることや

 動物を狩り、料理して食べることを覚えていきました




 また『石の男』とアルマーは『創造の民』となりました

 彼らと同族はこの世にある素材からあらゆるものを『創造』し

 便利な道具をこの世に送り出すと共に

 様々な知識を編んで広めていきました




 『生命の民』は自然に宿る神様の御使いに親しまれ、その力を借りることが出来ます

 そうして自然の中から『素材』となるものを取り出し、『創造の民』に渡すのです

 これは『生命の民』にしか出来ません

 また、彼らは豊かな『感情』の力を、『芸術』という形に昇華させることも得意でした


 一方、死を知らぬ『創造の民』は自然と親しくなれませんでしたが

 『生命の民』が提供する『素材』を加工し、新たな『道具』生み出す知恵があります

 これは『創造の民』にしか出来ません

 また、彼らは『生命の民』の『芸術』の為に劇場や舞台を造り、後世へ『伝える』役目も担いました




 こうして『生命の民』である〈メート〉と

 『創造の民』である〈ゾート〉は


 手を取り合い協力して


 神様の創られたこの素晴らしい世界を


 守り、繁栄させていくこととなったのです……







 それから随分長い時間が経ちましたが、今でも二つの民は互いに協力して神様の創られた世界の上で懸命に生きています。


 時には争い、時には助け合い、時には笑い、時には嘆きながら。


 それでも、自分達の対等さを疑う余地もなく。

 お互いに求め合うことを当然だと信じているのでした。




 これは、そんな二つの民が共存する世界でのお話です。







――――そして、それは、




 叶わぬ恋に飢え続けるものと、届かぬ愛を差し伸べるものの、永い永い、恋と愛の物語でもあるのでした……。



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