かばんちゃんと雁

きまぐれヒコーキ

0:プロローグ

「ったく、憎たらしい野郎だ。」


 草木の中にひっそりとたたずむ木造小屋の椅子に腰を掛けた、一人の男が言葉を零す。その名は大造。老練ながら老いを感じさせない敏腕狩人だ。

 男は、今ごろ地平線の向こう側を飛んでいるであろう、とある一羽の雁を思い返すように独り言を語る。


「賢さも、勇猛さも、威厳も、動物のそれじゃあねェ。狩人が雁に惚れる話なんざ、古今東西どこ探しても無ェよ。笑わせる。だが、アイツは、あの雁は、」


「…今までの俺じゃあ、お前相手には役不足だったな。また来いよ。それまで死ぬんじゃねェぞ」


「残雪さんよ」


 この、とある狩人と雁の物語は小学校の教科書に載り、今なお語り継がれている。

 この物語に登場する、狩人をも魅了した「残雪」などという雁は、あるいはそれ程に聡明かつ勇敢な雁は、実際には居たかもしれないし、居なかったかもしれない。

 しかしこの話が生まれるほどに、雁が優秀な鳥であることは確かである。


 大勢の仲間を率い、大海原を生身で飛び越え、ヒトを驚嘆させる。

 そんな鳥が、もしヒトの体を持っていたら、ヒトの言葉を話せたら。

 一体、どんな物語がつむがれるのだろうか。


 まあ、そんな事は有り得ない話だが。何か、動物を人間に変えでもする奇跡の物質でも見つからない限りは_




~あなたは、けものがお好きですか?~




「…あの、ありがとうございます。どこですかここ…」

「フレンズ化したばっかのようだな。ここはジャパリパーク。しつげんちほーだ」

「ジャパリパーク…しつげんちほー…」

「そして今のはセルリアン、ほっといたら私たちは食われる」

「え…食べられる…!?」

「ああ、だからこうして倒すか、逃げるしかねェ…お前、見たところ同じ雁のフレンズのようだな。どうだ、群れにならねェか? その方がお互い身を守りやすいはずだ」

「群れ…なりたいです! 不安なことだらけで…私にできることはしますから!」

「ああ、決まりだ。まあ気は張らなくていいさ」

「あの、あなたのお名前は?」

「私は_

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