第128話 いい気になってるんじゃないの?
「はあ……」
凛ちゃんの家から出ると僕はとぼとぼと家まで暗い夜道を一人歩く。
終電の時間は既に過ぎている。かといって今日は泊まれない。今日は本当に二人っきりの夜になってしまう。
凛ちゃんは好きだ、大好きだ……凛ちゃんと付き合いたい……もっと一緒にいたいって、そう思っている。そう思っている自分と、落ち着いて考えてみれば、凛ちゃんの全てを、心の傷も身体の傷も……その全てを背負う覚悟は僕にはまだ無い。
そもそも泉の事を忘れられ無い自分が一瞬の気の迷いで凛ちゃんとそう言う関係になったりする事の方が不誠実な気がする。
「凛ちゃんの前だと凛ちゃんが一番に、泉の前だと泉が一番に、愛真の前だと愛真が……いや、愛真は一番じゃないけど……愛真も好きだって思っちゃう……」
いっそ4人でハーレムに……なんて冗談でも言えれば僕の人生こんなに苦労していない。
何も無かった人生……ずっと一人で、ずっと影に隠れていた。
そんな人生だった僕に、僕の目の前に3人の天使が突然舞い降りてきた。
簡単に言うと、恋人にしたい泉、結婚したい凛ちゃん、家族になりたい愛真って感じだ。
良き奥さんに、良き母に、そして僕をそっと支えてくれるそんな存在の凛ちゃん……。
僕の天使……ずっとあこがれていた雲の上の人……泉……。
僕を救ってくれた恩人……僕の始めての友達、家族の様に思っていた愛真……。
そんな3人が今、僕に好意を抱いてくれている……。
多分こんな事はもう一生無いだろう……。
一人だったら良かったのに……一人だったらこんな思いになる事は無かったのに。
まだ高校1年……将来の事なんて考えられない。
ましてや一生の伴侶を選ぶなんて……出来っこない。
でも……もうこんなチャンスは一生来ないだろう、そしてこれは僕が変われる最後のチャンスでもある。
「逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ……」
今逃げたら……3人から逃げたら……多分僕は一生後悔する。
僕は決めなくてはいけない……一緒に人生を歩んでくれる人を。
僕を成長させてくれる人を……。
僕を……大人にしてくれる……人……を……って……うへえ。
「ただい……ま」
僕はそんな事を考えながら、小さな声でそう言って家の扉を開ける。
「「おかえりなさい……どこ行ってたの?」」
家の扉を開けると、玄関には泉と愛真の二人が立っていた
「あ、えっと……ちょっとコンビニに……まだ起きてたの?」
僕はしらばっくれてそう言うが……。
「へーーーー最近は女子の家がコンビニになったんだあ」
「え?」
「あのね一萬田さんから連絡来たよ、心配しないでねって」
愛真はそう言って僕に、恐らくは泉のスマホの画面を見せ笑った……えっと目は全然笑って無いけど……。
「……」
「お兄さま……どうして嘘をつくのですか?」
「え? いや、えっと」
「何か……やましい事でもあったのですか?」
「え? いや、えっと……」
「しーーーーんーーーーちゃーーーーん!」
「ひ、ひゃい!」
「お兄さま!」
「ふ、ふぁい!」
「とりあえずそんな所に突っ立ってないで……あと疲れてるだろうけど寝る前に少し話そうか」
愛真は少し嫌みったらしくそう言うと泉と二人で僕が靴を脱ぎ終わる前に、スタスタとリビングに方に歩いて行く。
ううう……逃げちゃ駄目……だよね? 逃げたい……。
これが透明人間から普通の人間なった損害……いや、恩恵なのか?
以前ならこんな思いはしなかった……でもこれは僕を思っての事……僕を成長させてくれる為に、僕の為に言ってくれているのだから……。
僕はそう思い、勇気を出して二人の居るリビングに入る。
そして、二人が座っているソファーの反対にゆっくりと腰を下ろした。
僕が座るのを確認すると愛真は直ぐに口を開いた。
「あのね真ちゃん……今は一緒に住んでいるのだから、勝手な事しちゃ駄目だよ! ──あと……まさかって思うけど、私や泉さん、あと……一萬田さんから告白されて、いい気になってるんじゃ無いでしょうね?」
「……え!」
「──へええええ、やっぱり……真ちゃんも随分と偉くなったねえ」
愛真が不敵に笑う……いや、その……。
「……真ちゃん……あのね……皆、真ちゃんが優しいからそう言ってるだけでね、実際付き合おうってなったら多分……私も皆も躊躇すると思うよ」
「……うん……ええ?!」
「はあぁ……やっぱり……ねえ、泉さんもそう思うでしょ?」
愛真は確認するかの様に泉に振り向き同意を求める。
「……え? わ、私は……お兄さまはお兄さまなので……付き合うって言うのは……」
赤ら顔でそう答える泉……。
「まあいいわ、泉さんのブラコンは付き合う事以上だから……あのねはっきり言うと、私は真ちゃんの事好きだけど、でもね、その……実際に真ちゃんと付き合う事があったしても、今の真ちゃんと……その……エッチする事までは考えられないよ……ましてや将来の事なんて全く考えられないの」
「はうう!」
なんか……今僕の胸に刺さった……物凄く尖った物が……。
「多分ね……一萬田さんも、実際そうなったら躊躇すると思うよ?」
「ぐは!」
またクリティカルが……。
二人の目が……目線が僕の胸に突き刺さる。愛真の言葉が僕の胸に突き刺さって来る。
そう……僕がさっき考えていた事が全否定されているから……。そう……成長させて貰える、なんて考えが間違っているって事に今さらながらに気付かされる。
「……その……ごめん……」
僕は二人に謝った。
そして心で凛ちゃんに謝った。
そう……相手に委ねている様じゃ駄目なんだ。
自分で……自分で成長しなければ……そしてこの3人に相応しくならなければって……僕は……そう思っていた。
【あとがき】
また新作書きました。書いてしまいました。(´・ω・`)
今回は止まらず1部完まで一気に書きます。m(__)m
https://kakuyomu.jp/works/1177354054909505359
義理の妹に告白したら男嫌いだから無理と言われた。でもそのショックでTSしたら、迫られ捲って困ってます。
宜しくです(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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