悪魔との交換日記

こんぽた星人

悪魔との交換日記








あはっはは!あははは!!可愛い顔が台無しだよ!?


私は今、クラスのみんなに囲まれ、笑われている。


だっさ!!きもすぎない!?


私は今、クラスのみんなに囲まれ、蔑まれている。


もう生きてても無駄だと思うよ!?死んだ方がいいよ!ね!?


私は今、クラスのみんなに囲まれて・・・。










殺したいな。


クラスのみんなにいじめを受け、抱いた感情は"これ"だった。


「死にたい」ではなくだ。











私は家に帰り「ただいまー!」と大きな声で挨拶をする。


お母さんは「おかえり!」と私を迎えてくれる。


お母さんには私がいじめられてる事は伝えてない。


泥だらけにされた日は、"公園であそんできた" と嘘をついた。


女子中学生が学校帰りに泥遊びをしてきた…というのは、ちょっと不自然だがなんとか切り抜けた。


私は自分の部屋に戻り、日記帳を開く。


昔は平和な日記帳だったが、今はクラスメイトの愚痴で溢れている。


愚痴を言う相手がいない私は、この日記帳で日々ストレスを解消している。





今日は水をかけられた。許せない。

水谷 由美。あいつが本当に許せない。

豚みてぇな顔して笑いやがって。

泥でも食ってろカス。





ふぅ。


今日の愚痴を書き終え、日記帳を閉じる。





そして次の日…。日記帳を開くと





水谷 由美が憎いか?





と1行。付け足されていた。


とりあえず、私はこう書いた。





うん





その次の日。

また勝手に文字が付け足されている。






殺したい?





うん





いいだろう。





気づけば私は交換日記をしていた。


悪魔みたいなやつと。


なぜか、"うん" と書くことに抵抗がなかった。

信じていなかったものあるが、マジで殺したかったというのが1番大きい。


次の日、日記帳を開くとこう書いてあった。





では、我とひとつ。交換をしよう。





交換?





"水谷 由美を殺す"。これが我からお前にさずけるものだ。

お前は我に何をさずける?





じゃあ、お気に入りのクマの人形で。





…いいだろう。お前にとってはかなり大事なものらしいからな。






普通の人間ならこの状況に困惑するだろうなぁ。我ながら、よく冷静に会話出来ているな。


そんなことを思いながら、私は日記帳をとじる。


"人を動かすのは復讐心だ"


そんな言葉を少年漫画の敵キャラのセリフで見た事がある。


それが今ならよくわかる。




私はその後お風呂に入り、夕ご飯を食べ、布団に寝っ転がった。


明日、水谷 由美は死ぬのだろうか。私のお気に入りのぬいぐるみはどうなるのだろうか。


頭の中を期待や不安が入り交じっでいたが、次第に眠くなり、眠りに落ちたのだった。










翌朝。


学校に到着し、水谷 由美が来ているか確認。


まだ、来ていなかった。


クラスのみんなにいじめられるのを避けるため、トイレに向かう。そしてスマートフォンを立ち上げ、テキトーに時間を潰す。


学校では授業中以外はこうやって過ごしている。





朝のHR1分前。私はトイレを出て、教室に向かう。


私はギリギリで席につき、先生を待つ。


周りからコソコソクスクス聞こえるが、無視。





…いつもの時間になっても先生が来ない。


みんながざわざわし始める。


10分くらい経ってから、慌ただしい様子で入ってくる。


「すみません!遅れて…!」


先生は息を整えて、話を始めた。教室は静かになる。


「今日の授業はなしです。今から私の車でみなさんを家にお送りします」


一瞬静かになった教室がまたうるさくなる。


「静かに!…よく聞いてくださいみなさん」


教室がまた静かになった。


「水谷 由美さんが今朝、包丁で刺されているのが見つかりました」










「大丈夫だった!?」


先生に家に送ってもらった私は、家に入る。


玄関には心配そうな顔をした母親の姿があった。


「うん、なんともなかったよ」


そういって私は母に笑いかけたあと、部屋に駆け込んだ。


そして、急いで日記帳を開く。


そこには





気分はどうだ?





と書いてあった。





最高





と2文字だけ私は付け足し、堪えきれずに笑いだしてしまった。


こんな最高な気分ははじめてだ。


今まで、私を苦しめてきた奴ら…待っていろ。


今度はお前らが苦しむ番だ。














私は3、4日に1度。人を殺した。


水谷 由美の次は、石川。その次は根岸。


私の感覚は既に麻痺していた。人を殺すことに何も抵抗を感じなかった。


ただ、復讐心に動かされていた。





根岸を殺した次の日。


私は日記帳を開き、




今度は、白石を殺したい。

交換するものは、




そこまで書いて、その先何を書くか少し迷った。


部屋を見渡す。


過去に渡してしまったお気に入りの人形やアクセサリー、文房具はすでに部屋にはない。


…服でいいか。


私は日記に “白いワンピース” と付け足し、日記帳を閉じた。



その次の日、家に帰り、自分の部屋に入ると、とてつもない異臭が漂っていた。

嗅いだことの無い、生臭いかんじだ。

私はとりあえず窓と部屋のドアを開けて換気し、やっとの思いで臭いを消した。


しかし、原因はわからずまま。


まぁ、また発生すれば、また消せばいい。


私はそんな気持ちで日記帳を開いた。


そこにはこう書いてあった。




ワンピースはたしかに受け取った。明日、白石を殺す。




私はそのメッセージを見て、日記帳を閉じた。


これで4人目。こいつを殺せば、いじめの中心だったヤツらは全員消える。


いじめはなくなるだろう。


だが、それでおわらせるつもりはない。


そいつらに便乗していたヤツらも、許さない。


クラス30人のうち、いじめに無関係だったヤツと、不登校のヤツを除いて全員だ。



私はそんな思いで、その後、風呂に入り、眠りについた。






次の日、朝起きたら、またあの異臭がした。


昨日よりは薄いが、やはり臭い。


学校から帰ったら原因を探そう。


とりあえず窓を開け、学校に向かった。


白石は死んでいた。


やった。


これで第1段階はクリアだ。


家に帰ったら、次に殺るヤツを考えよう。


私はそう思いながら、家に帰った。




「ただいまー」


「おかえり」


いつものあいさつをかわし、靴を脱ぐ。


「最近物騒ね~。かなも気をつけなよ?」


「うん、わかってる。最近は1人で帰らないようにしてるし」


嘘だけど。一緒に帰る友達なんかいるわけない。


そんな短い会話を交わし、その後階段を上がり、自分の部屋を開けた。








そこには1人の男がいた。


「えッッッ!!」


おどろいたと同時に腰をぬかす。上手く声が出ない。


「あ、見つかっちゃったぁ・・・」


その男はにったりと笑い、ゆっくりこちらに近づいてくる。


「かなちゃん、そんなに怯えなくてもいいんだよ」


汗も震えも止まらない。


恐い。


何故私の名前を知っている・・・?


「あなた・・・誰ッ・・・」


やっと出た言葉がそれだった。


「ぼくだよぉ。かなちゃん」


その男と目が合った時、思い出した。


加藤だ。不登校の。ここ何ヶ月か学校に来ていない男だ。


「ひどいなぁ。僕と何回も交換日記してくれたでしょぉお?」


「え・・・?」


思考が停止する。加藤は何を言っている?


「僕がぁ・・・君のために水谷と石川と根岸と白石を殺したんだよお」


加藤はそのまま、話し続ける。


「その代わりに、君のものを貰ったんだよ・・・君のワンピースのにおいを嗅いだ時は我慢できなくてね・・・臭かったらごめんねぇ」


ということは、こいつは私のワンピースで…。


加藤はじりじりと私に近づいてくる。


「こ、こないで・・・」


「来ないでだと!?」


加藤はいきなり激昴した。


「僕は!!君の!!ために!!4人も殺したんだぞ!?」


「僕は君を!こんなに愛してこんなに尽くしたのに!!なんで君は僕を愛してくれないんだ!!」


そういって加藤は私の首を絞めた。


まずい、抵抗しなきゃ・・・


でも、体に力が入らない。





意識が朦朧としてきた。









加藤はなにかを叫んでいるが、もう聞き取れない。









ああ、私が悪いんだ。自業自得だ。


私が加藤の力なんか借りるから。



私の意識はそこで途絶えた。













───────────────




・・・白い天井だ。


視界の脇には母がいる。


「かな!!かな!!」


最初は、ばやけていた母の顔がハッキリしてきた。


「よかった・・・あなた丸一日寝てたのよ?」


呆れたようにそう言った母の目には涙が浮かんでいた。


「でも、本当によかったよ・・・かな・・・」


お母さんは、私が意識を失ったあと、部屋から奇声を聞き付けて警察を呼んだらしい。


加藤は現行犯逮捕、私は救急車で病院に運ばれたらしい。


「お母さん」


「なに?」


一通り母から話を聞いたあと、私は自分のした事を全て母に話した。


いじめられていたことも。


人をころしたことも。


「そう、だったのね」


全てを聞いた母の顔は、悲しい顔をしていた。


「ごめんね・・・。かな」


お母さんは私の顔を抱いて、泣きながら謝った。


「お母さんが気づいてあげられればね…ごめんね…!!」


何回も何回も謝る母に、わたしはなにも言うことが出来なかった。







その後、事情聴取にきた警察の人にも同じ話をし、私は少年院に行くことになった。



私はもう、過ちは繰りさない。絶対に。





fin.











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