篇什の大樹

秋雨 空

第1話 夢の宴

光の粒が瞬く、幻想的な世界に行ったことがある。





光の欠片を集めて白光で形作られた野兎や山猫。





夢の中へと遊びにやってくる者達もいる。





白くてぬらりとした、手足の長い棒人間みたいな姿の者達が幾人も、幾人も。





彼らは手を繋いで円を組み、中央に居る私を取り囲む。





周囲は何処を見ても闇の最中で、私の助けを求める悲鳴は虚しく暗がりに吸い込まれていってしまう。





きつく瞼を閉じて、ただ一心に願い続ける。





助けてくれ、ここから出してくれ────ふと、気が付くと目を開けて布団に横になっている私がそこにいる。





零れた涙が鼻梁の山肌を乗り越えて、枕に染みを作る。








先程とは違い、闇は何処にもなく崇高な白い光に包まれているのに、私は悲しくなってもう一度一雫の涙を流す。








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