第3話
「きゃあああああああ!!!!」
梨香の悲鳴が聞こえたのは、俺が隆司を探し回っていた最中のことだった。どうせ虫やらネズミやらが出たとかその程度だろうとは思ったものの、先の出来事もあったため一応様子を見に行く事にした。階段を上り、声の方に進んでいく。
「だいたいこの辺りだったよな……」
近くの扉を端から開けて、中を覗いていく。ひとつ、ふたつ……そして三つ目のドアを開けた時、俺の目に衝撃的な光景が映った。
「おい……なんだよこれ……」
そこにいたのは頭部が潰れ血まみれの状態でうつ伏せに倒れている梨香と、俺の身長を軽く越えるほどの巨大なブルーベリー色のチンコだった。ギンギンに勃起したそいつを見た俺は、即座にここで何が起きたのかを察してしまう。
「まさかお前が梨香を……」
俺の声に反応したのか、チンコはその巨体を引き摺るようにしてこちらを振り向くと小刻みにジャンプし始めた。大樹の幹のような竿が床にぶつかる度に、ずしん、ずしん、と大きな音が鳴る。
「(……こいつ、俺を踏み潰す気だ!!)」
少しずつ跳躍の距離を伸ばしながらこちらに近づいてくるチンコの意図に気付いた俺は咄嗟に駆け出した。乱暴にドアを開けて廊下に飛び出し、とにかく前へ前へと必死で走る。
「くそっ!なんなんだよアイツは!!」
幽霊なんかよりも圧倒的に非現実的で尚且つふざけ倒した存在に対し、俺は恐怖よりも怒りを感じていた。梨香は確かに嫌な女だったし俺はあいつをよく思っていなかったが、それでも拓人にとっては大切な彼女だったのだ。それがよりによってあんなチンポなんかに……。そう思うと、握られた拳にぐっと力が入る。とはいえ俺の力じゃアレを思い切りぶん殴ったところでビクともしないだろうし、今は逃げるしかない。幸いなことに巨大チンポはそこまで機敏ではないらしく、しつこくこちらを追ってくるものの足を止めなければ追い付かれはしなさそうだ。
「早く来やがれウスノロチンポが!!」
俺は逃げ続けながら普段は絶対に口にしないであろう汚ならしい罵倒を思い付く限り後方の青陰茎にぶつけていく。しかし、そんな余裕は長くは続かなかった。
「(……行き止まり!?)」
いくらヤツの足が遅いとはいえ、逃げ場がなければどうしようもない。まだそれなりに距離はあるが、このままでは俺が梨香のようにミンチにされるのも時間の問題だ。くそ、一体どうすれば……
「修也!こっちだ!」
周りにある扉のうちのひとつから拓人が顔を覗かせてそう叫んだ。部屋に入ったりしたらそれこそ逃げ場がなくなってしまうんじゃないかと一瞬思ったものの、他に助かる方法もない。俺は拓人を信じて部屋に飛び込んだ。部屋は一階のものと殆ど似たような作りになっていて、やはり家具もベッドとクローゼットくらいしか置かれていない。
「ここから逃げるぞ」
そう言いながら、拓人は部屋の床を指差した。しかし、そこにはカーペットが敷いてあるばかりで逃げ道など見当たらない。
「お、おい!ふざけてる場合かよ!」
こうしている間にもヤツは俺達を踏み潰そうと確実に迫ってきていうというのに。しかし憤る俺とは対照的に、拓人は至って冷静だった。
「落ち着けって。ほら、こういうことだ」
そう言いながら拓人がカーペットを捲ると、なんとそこには下へと続く階段があった。その入り口は狭く、人間ならともかくあの巨大なチンコはきっと通れないだろう。
「ほら、早く行くぞ」
「あ、あぁ」
やはりこれだけ大きな屋敷だと隠し通路のひとつやふたつは存在するものなのだろうか?などといったことを考えながら、俺達は巨大陰茎の初めての追跡を降り切ることに成功したのであった。
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