DAY10:奏笛の鈴口
「ねぇ…僕がいつか正気を失ってしまったら…そのときは君の手で殺してくれるかい?」
「もちろんですとも。
それをわかってて私は貴方を愛したの」
目の前にいる同じくらいの背丈の陰茎の鈴口に私はそっと口付けをした。
彼は真羅。
私と同じ愛や性欲を司りながらも、その身に破壊と殺戮の欲望を宿した異形の神だった。
愛や性欲を司る私達は愛し合い、そして深く深く結びついていた。
いつか来るであろう…真羅が神としての本能に呑まれて世界を…私を壊したいという本能に呑まれてしまう時までを惜しみなく楽しむために…。
「もう無理そうだ。もっと永く一緒にいたかったよ」
「私もよ。さよなら…」
震える亀頭に手を添えて、鈴口から溢れだした透明な分泌液を指で拭って、私は陰茎の姿の彼を抱きしめ、彼の睾丸部分を思い切り踏み抜いた。
パン…という空気の詰まった袋が破裂するような音がして私の足に生暖かい液体が付着した。
そのまま真羅は死ぬはずだった。でも、私は失敗したのだ。
一つしか潰れなかった睾丸は、急にムクムクと膨れ上がり、そこから真っ黒な煙が吹き出したかと思うと残った睾丸は真っ赤な血を撒き散らしながら天高く飛んでいってしまったのだ。
彼の残したたくさんの血痕からは次々と巨大な陰茎が生え、飛んでいった彼を追うように空を目指し始めた。
だから…なんとか不完全な封印をして一時しのぎをして、準備を整え、今度はちゃんと彼をこの手で殺せるように時間をかけて準備をした。
彼との約束を果たすため…もう一度元の彼に会えるかもしれないって希望を託して…。
※※※
ツインゴールデンボウルと一体化した私の腕に抱かれている真羅を見ると、睾丸が破けて赤い体液を流している彼は微かに竿の部分を動かしたように見えた。
まだ死んでなかった?と慌てた私の心を見透かしたように、懐かしい柔らかな声が耳の奥に響いてくる。
「なんだか…ずっと悪い夢を見ていたみたいだ…」
「そうだね…」
「ああ…よかった…君がちゃんと殺してくれたんだね…」
「うん…約束…ちゃんと守ったよ…」
「ありがとう…カーラ…」
彼は、そう言い残すと最後に鈴口を震わせて、とても美しい音を奏でた。
鈴口から奏でられたその音は、この世のどんな笛から奏でられる音よりも美しく、優しい音色で、愛する人へ捧げられた歌のようでもあった。
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