奏笛の鈴口
小紫-こむらさきー
DAY1:ミッションチンポッシブル
「私達は負けるわけにはいかない…これが不可能だって言われてる作戦だとしても…私は…私は…」
操縦桿についているワイヤーがギシギシと悲鳴をあげる。
巨大な腕から繰り出すパンチは、巨大陰茎の亀頭をきっちり捉えているはずなのに、表面のやんわりとした肉厚で硬い本体部分への手応えが感じないのがわかる。
目の前に聳え立つ巨大陰茎は、体中に血管を浮きだたせると身体に少し赤みを帯び、威嚇をするように小さな鈴口をパクパクとさせ、ピィィィィィィと警告音のようなものとともに粘り気のある半透明の液体を滴らせた。
『気をつけろ…あのカウパーと呼ばれる液体は酸性だ』
「わかってる」
飛び散ったカウパーに私の愛機ツインゴールデンボウルの頭部についているツインテールのように格納されている2つの金色に輝く巨大鉄球が溶かされるのを確認して舌打ちをしてしまう。
私は勝たないといけないんだ…勝って…ちゃんとお母さんのところに帰るんだ…。
決死の覚悟で、私は塔の残骸を守るように立ちふさがる最古の巨大おちんちんにツインゴールデンボウルの拳を振り下ろした。
※※※
「巨大なちんちんだ!こっちにくる!逃げろ」
突如として都市を襲った巨大な陰茎にしか見えないそれは、次々と天高く聳え立つビルをなぎ払い「俺こそがこの大地に聳え立つ唯一のモノだ」そう言いたいかの如く都市を、町を、家を硬く張り詰めた亀頭のような部分を竿の部分をしならせながら打ち砕いていった。
町中でよく見る電波塔と同じか、それより少し大きいくらいの巨大おちんちんは、海から上陸したかと思うと、物凄い速さで破壊活動をしながらこの国の首都に向かったのだ。
巨大な陰茎にしか見えない生命体と思しきそれは、一匹が首都の巨大電波塔に寄り添うように佇み、先端にある鈴口のような部分を震わせてまるでフルートを思わせる音を響かせると沈黙をした。
悪夢の本番はそれが終わりではなく、そのフルートを思わせる美しい旋律が開始合図だったようで、長い長い巨大な陰茎から発された音を合図に次々と巨大なおちんちんが世界各国に上陸し、同じように破壊活動をし始めたのである。
世界はあっという間に巨大な陰茎たちに破壊され、そして生き延びた人々は都市部を離れ森のなかに隠れ住んだり、巨大な陰茎たちの目(らしき機関は確認されていないが)を盗むように、彼らが活動を鈍らせる夜にだけ食料などを都市部へ奪還しに戻り、同じコミュニティの人々に分け合うと言ったような暮らしをしているのだった。
私が知っている昔話はこんな感じだ。
母が私を生んだのは、巨大な陰茎が世界を破壊し尽くしてからしばらくして、都市の近くじゃなければ巨大陰茎たちが攻撃をしてこないことがわかってからのことだったらしいから、私はあの巨大陰茎たちが世界を破壊したなんてピンとこない。
巨大な陰茎たちは、あの巨大な身体を這いずり回らせたり、時々亀頭をびたんびたんと地面に叩きつけたり、お互いに竿とよばれる部分や陰嚢と呼ばれる根本?についている丸っぽい部分をぶつけ合って喧嘩をするときと、人間が武装をして襲いかかってくる時以外は基本的にのんびりしてる。だから、陰茎の住処となっているあの瓦礫の山が、空に届きそうなくらい高い建物だったとか、その建物にはたくさんのコンピューターがあって夏でも冷たいものが食べられたり、新鮮な食べ物をいつでも手に入れられるような場所があったとか、私達の祖父母にあたる人たちが数えきれないくらい大勢住んでいた…なんてことは魔法とかそういうのみたいな大人が作った出まかせなんじゃないかなって怪しんでる。
そんな瓦礫の山の中を見てちょっとだけそういう世界があったのかなって信じられるのは電波塔って大きな建物のおかげだ。
巨大陰茎たちが愛おしそうに守っていたり、時々切なげな旋律をあの小さな口から紡ぐ対象であるあの塔だけは綺麗だなと思った。
「はい。…わたしの娘がですか?そんな…はい…でも…」
玄関のドアの閉じる音が聞こえた。
さっき家を訪問してきた見慣れない人間だったけど、その人が帰ったのだろうか。
なんとなく母の声の様子がおかしいくて心配になって見に行ってみると、とても暗い顔をして玄関の扉にもたれかかるように立っていた母が、少し赤くなった目で私のことを見つめてくる。
「
「は?いきなりなに?選ばれるって?」
「対巨大陰茎掃討作戦特別部隊…よ…」
母は、そこまで言うと泣きながら床に座り込んでしまった。
どうしていいのかわからなかった私は、嗚咽を漏らす母の背中をただ
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