第4話
オレが耳を疑ってると、プロデューサーはバツが悪そに念を押して来る。
「勿論さ、次っきりで良いんだよ。次っきりで」
「次、だけ。はぁ、」
「でぇ、その後からはさ、ウチの事務所の看板シンガーいるでしょ?」
「はぁ。いつもオリコンチャート10位以内のイケメン君?」
「そぉそぉそぉ。その子の曲を頼みたいんだよ。
全国ツアーの企画も上がってるからさ、そうゆうのも合わせると、
結構 忙しい感じになるんだけど、手ぇ貸して貰えないかなぁ?」
「……」
「頼むよ! コレまでの好って事でさ!
歌う本人もさ、石神チャンがイイって言って聞かないからさ!」
……良く分からんのだけどぉ、仕事の依頼? 作曲の依頼?
「はぁ、分かり、ました……」
「いやぁ恩にきる!! んじゃ、詳しい事はメールするから! そんじゃぁ!」
プロデューサーは電話を切った。
オレの耳にはツーツーツーって音。
「オレの曲?」
『石神チャンの曲って王道いってる割りにテクニカルだろ?
その辺、ファンの子も気合入れて曲聴いてくれるんだよ。
合いの手入れた時の感じとか、胸アツって高評価だったからさ』
ちょっとは受け入れられてたんかな?
『歌う本人もさ、石神チャンのがイイって言って聞かないからさ!』
「需要、あったの、か?」
そぉ捉えてもイイんかな?
オレの曲、好きって言ってくれてる人、世間サマにもいらしたんかな?
そぉ思うと何か、聴こえなかった音が、もう1度 聴こえてきそうな……
カチャ、
あんまりにも戻らないオレを心配してくれたンか、ユーヤ君がドアを開けて顔を出す。
「ぃ、石神サン? 電話……まだ?」
「ぇ?」
だいぶ呆け顔のオレにパチクリ瞬きを繰り返して首を傾げるユーヤ君。
カワイイ カワイイ、オレの天使。
「ねぇ、ユーヤ君、」
「は、はぃ……」
「辞めても、イイかな?」
「ぇ……?」
「しがないカンジのリーマンに転職すんの……」
さっき、あんな偉そうな大人の主張をしたばっかりだって分かってんだけど、
もう1度、自分の中に響く音に耳を傾けてもイイだろうか?
「曲の依頼、来た、から、」
「え!?」
ユーヤ君はデカイ目を もっとデカく丸めて顔を赤くする。
そいで、1番の笑顔で言うんだ。
「辞めるの、許す!」
飛びついて抱きつくユーヤ君を受け止めて、そしたらさ、もっとさ、音が着こて来るんだ。
再起をモノにしろ! って。オレは まだ終わってない! って。
そうゆうの。鼓動と同じ音。
「オレ、曲書くよ。
ユーヤ君が見つけてくれた石神亮太郎を、今度こそホンモノに出来るような、そんな曲」
「はい!!」
ユーヤ君の耳に狂いがないってコトを証明する。
(そんなコトが出来たら、オレは安心してキミの隣りに住んでいられるような気がするんだ。
キミの隣りにいてもイイ男になれるような気がするんだ)
でもね、時間は作ってピアノを弾こう。オレがガッツリちゃっかりサポートするよ。
そぉして いつか、聡明なピアニストになったキミに弾いて貰えるような曲を書く、ホンモノの作曲家になってみせるから。
おわり
Writing by Miki Sakato
おとなりダーリン。 坂戸樹水 @Kimi-Sakato
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