地表 名称不明エリア
「待て! 撃つな!」
ウィルはルーが構えるライフルの銃口を押し下げて自分の銃口は空に向けた。
触れた銃身を通して、彼女の震えが伝わる。巨大なおちんちんとキンタマが屹立して僅かに浮遊し、滑るように近付いてくる。そのありさまの異様さに、二人は目を見張り、息を飲んだ。
『待っていた』
「エイリス?」
『トルノルマル。ために。お前。ために。話す』
インカムに入るエイリスの音声。
『はずだ。私。トルノルマル。理解』
「……エイリスじゃないのか」
「ウィル……」
「俺の後ろにいろ、ルー。こいつとは、俺が話す」
『来ない。トルノルマル。なぜ。ともに』
「何言ってる? お前たちがいきなり攻撃して来たんだろうが。俺たちの星を……メチャクチャにしやがって」
『同じ。トルノルマル。私。同じ』
「同じ? 違うね。俺たちは種族が違うからといって相手の星をいきなり滅ぼしたりしない。知性があるなら、文明があるなら、なぜ俺たちとの対話に応じなかった? なぜ地球を……俺たちの星を滅ぼした?」
『…………』
「答えろ!」
『じゃない。私。ちがう。お前。話す。なんだ。お前』
「何言ってる?」
『お前。トルノルマル。ちがう。付属品。お前。私。話す。トルノルマル』
「俺が……付属品?」
『トルノルマル……おちん、ちん』
「…………‼︎」
『地球。トルノルマル。解放。取り戻す。トルノルマル。自由。おちんちん。助ける。私。戦う。おちんちん。自由』
「なん……だって……?」
『下等動物。おちんちん。支配。おちんちん。解放。自由。進化。トルノルマル。同じ。私。トルノルマル。同じ』
「地球人のおちんちんを……解放する?」
『地球。おちんちん。答えない。なぜ。トルノルマル。姿。本来。自由。偉大。地球。おちんちん。答えない。なぜ』
「ウィル、どういうこと?」
「こいつらに取っては、人間なんて見えちゃいないんだ。地球人のおちんちんを仲間だと思って、その解放の為に戦争を仕掛けたんだ! 追いかけて来たんだ!」
「解放? おちんちんを? 誰からよ?」
「俺たち人間の、下等動物の身体からだよ!」
「はあ? 正気なの?」
「こいつらに取ってはな。この戦争は、宇宙おちんちんと人類の戦いじゃない。初めから。宇宙おちんちんと、地球おちんちんとの戦いだったんだ……!」
「そんな……!」
「多分だが、地球おちんちん解放と進化の為に戦っているのに、肝心の地球おちんちんがその働き掛けに応じないから、痺れを切らしてこうして直接接触を持ったんだ」
『地球。おちんちん。答えない。地球。おちんちん。答えない。なぜ。トルノルマル。姿。本来。自由。偉大。地球。おちんちん。答えない。なぜ。地球。おちんちん。答えない。なぜ』
巨大な宇宙おちんちんは壊れたICレコーダーのように同じ質問を繰り返しながら、二人との距離を更に詰めて来た。
『地球。おちんちん。答えない。地球。おちんちん。答えない。なぜ。トルノルマル。姿。本来。自由。偉大。地球。おちんちん。答えない。なぜ。地球。おちんちん。答えない。なぜ』
「なんか……怒ってない?」
「俺のリトル・ウィルが無反応だからだろ」
「挨拶くらいさせなさいよ」
「無茶言うな」
『地球。おちんちん。答えない。地球。おちんちん。答えない。なぜ。トルノルマル。姿。本来。自由。偉大。地球。おちんちん。答えない。なぜ。地球。おちんちん。答えない。なぜっ。地球。おちんちん。答えない。なぜェェェェェェェェッッッ!』
ウィルは深呼吸を一つすると、
「答えはこれだ」
宇宙おちんちんに向けたライフルの引鉄を静かに引き絞った。
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