勝利だギューちゃん

第1話

列車に乗っていた・・・

田舎の海岸沿いを、カタコト走るローカル線・・・


そのボックスシートに腰を下ろす。

車窓からは、青い水平線が続いている・・・


季節は晩秋・・・

さすがに、泳いでいる人はいないが、釣りをしている人は見かける・・・


僕は海には用はなかった・・・


久しぶりに、友達の女の子に会いに来た。

もうすぐ彼女の住む駅に着く・・・


僕は降りるしたくをした・・・


駅舎を出た。

一台のタクシーが停まっていた。

僕はそれに乗車する。


しばらくすると、目的の場所に着いた。

ここで、あの子が待っている。

僕は運転手さんに告げ、タクシーを降りた・・・


しばらくすると、彼女がこちらを見て微笑んでいた。

「久しぶりだね。元気だった?」

「うん、まあね」

「来てくれてありがとう。」

「会えてうれしいよ」

「私も」

しばらく会話する。


僕は彼女に声をかけた。

「見晴らしがいいね」

「うん、パパとママが私のためにと、選んでくれたんだ」

「他のみんなは元気?」

「あまり来てくれないからわからないの。君は来てくれてるけどね」

「みんな、忙しいんだね」

「だと、いいけどね」


「ねえ、見て」

彼女が目で差した方向を見る。

「海が奇麗でしょ?」

「君は、海が好き「だった」からね」

「過去形にしないで・・・今も好きだよ」

「あっ、ごめん」

思わず謝ってしまった・・


「そうだ、これ」

「うわーお花とか、お菓子とか嬉しいな」

「喜んでくれてよかったよ」

「ねえ、ゆっくりしていけるんでしょ?」

「うん、積もる話もあるし、しばらくはいるよ」

「ありがとう。ねえ、最近あった事聞かせて・・・」

僕は、時間の経つのを忘れて、彼女と話した・・・


「あっ、パパとママが来たみたい」

「えっ」

振り向くと、彼女の両親がこちらに来た。

「せっかくだから、会っていって・・・」

「うん」


彼女の両親に、会釈をする。

向こうも僕を覚えていてくれたようだ。


「娘のために、いつもありがとう」

「いえ、友達ですから」

彼女はそれを見て、微笑んでいた。


しばらく会話をした後、親子水入らずは悪いと思い、

帰路に着く事にした・・・


彼女にまた来ることを目で合図すると、彼女は微笑んだ。

そして、小さく手を振った・・・


彼女は僕の友達だ・・・

またいつでも会いに来よう・・・


それが僕に出来る、彼女へのただひとつの証であり、絆だ・・・


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勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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