第24話 あまりにも

 綺麗な海を見ていた。

 岩場に囲まれた円形の海、不思議とそこだけ波が立たず、どこまでも澄んだ海水は底のサンゴまでハッキリと見える。

 岩場の外は静かに波が立ち青々とした海がどこまでも広がっている。


 横になって海を見ていた。

 あの岩場は僕が子供の頃『カニ岩』と呼んでいた岩場だ。

 海岸から、3mほどしか離れていなかったが、子供の頃は少し勇気を出して足のつかない海を泳いで渡らなければ行けない岩場、でもカニが沢山いて、僕はカニを採りたくてバケツを持って片手で泳いで渡って、カニを逃がさないように、また泳いで戻らなければならなかった。


 とても懐かしい気持ちになった。


 また行きたいとは思わない。


 あれは…あの景色は、僕の幼い頃の記憶。

 僕が造った、あまりにも美しい世界。


 それが虚構だと僕は誰よりも知っているから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る