Super Sparkring
@yunagi12
第1話
夏休み。実家に帰り、母とのんびり午後を過ごしていた。
「鷹野 洋君って覚えてる?」
「え、知らない」
「むかーし、私の横浜の同窓会に小春を連れてった度に、ちょくちょく一緒に遊んでた子。英語話せて、茶髪っぽい、目がくりっとした男の子いたでしょ?
まあ、一瞬だったから覚えてないか」
「あー、あの子か。」
「あれ、覚えてるの」
「うん、ぼんやりと」
「その子、ニューヨークにいたんだけど、秋から日本に住むんだって。で、
良かったら久しぶりにみんなで会わないかって、洋君ママが言ってて」
「え、おお...いつ?」
「早くて再来週かな?まあ追い追い言うね。希美ちゃんとか廉くんとかみんなで久しぶりに集まろうかって」
「わーいいね、楽しみ。」
「よしじゃあ伝えとくね。」
そして、某日。
横浜のレストランで、私たちは再会した。
「わー小春ちゃん!?きれいになったね、元気?」
声をかけてくれたのは廉ちゃんママ。
母の高校の同級生で、廉ちゃんとは同じ幼稚園だった。
沢田 廉。同い年。
高2にあった時以来の彼は
記憶より少し垢抜け、こなれた様子。
理数系が得意だった彼は、理数系の大学へ進学した。1#[
当時見た目が女の子のように可愛らしかったので、ママ友の間で廉ちゃんと呼ばれたのが子供間でも広まり、
それが続いている。
本人は呼ばれ方の由来を知らないのだが。
「小春ちゃん久しぶり、元気?」
「廉ちゃん?大人になったね〜!」
「な、大学入ってから一回も会ってへんよな。また会おうな!」
廉ちゃんは小学校から京都へ引っ越し、大学から上京した。
「だよね、あ!のんちゃん!」
「やっほーーー、あれ、廉ちゃんだ!
大学こっちなんだよね、会おうよーー」
のんちゃんも同い年。
希美
のんちゃんは横浜の大学。
リケジョで、たまに会う。
「あ...」
カランコローンと音がし、
机に向かってきた美青年と、知的な女性。
「わーやだ莉子ちゃん?!久しぶりー元気だった!?」
私の母が大感激しながら女性に近づく。
女性も満面の笑みで私の母に抱きついた。
「清佳ちゃーーーん!会いたかったーー!」
後ろの青年は引き気味に苦笑いをしている。
「あ、洋くんも大きくなったねーー、随分イケメンね!モデルさんかと思っちゃった!」
母たちは大感激しながら洋くんと呼ばれる青年に声をかける。
「じゃあ、子供たちはあっちで、私たちはこっちね。」
2つのテーブルに分かれ、再会の時を楽しむ時間が始まった。
洋君は気まずそうに私たちのテーブルに近づき、
「あ、どーも、鷹野洋です。ここいい?」
「あぁどうぞどうぞ!よろしく」
人当たりの良い廉ちゃん。
洋君は廉ちゃんの隣に腰かけた。
廉ちゃんは洋君に話しかける。
「佐々木 廉です、覚えとる?横浜で生まれたんやけど、小学校から京都にいて、大学でまた戻ってきたんだ」
「あー、あの水鉄砲すごかった子でしょ?なんか覚えてる」
「えっ!ちょ!マジいややわーもう!」
「あ、わたし平田希美ですー、
ずっと横浜です。わたしは覚えてる?」
「あー、なんか。
大きい白いぬいぐるみ持ってた、おとなしい子?」
「あ、そうそう!昔体弱かったからあんま外遊びできなかったんだよね〜。
小春は覚えてる?」
「ローラースケートの子でしょ?」
「あ、そう!すごい」
「よっしゃ!」
「洋君はずっとニューヨークなんやっけ?」
「や、2歳まで日本いて、小2から4年くらい日本帰ってきたけど、そのあとまたずっとニューヨーク。」
「行ったり来たりだねー。」
「あ、そういや小2の時も会わなかった?」
「あー会ったね、陸くんの家で遊んだとき居た気がする、洋くん」
「そうそう、みんなとはそれ以来だよね」
「居たり居なかったりやから分からへんわ!記憶が...!」
「なんで日本帰って来たの?」
「ICUに編入した。習いたい教授がいて。日本にも来たかったしね」
「そうなんや。何の分野なん?」
「物理学。」
「おお、俺は応用化学。近いな!」
「物理か〜、みんなすごいね。
私バリバリ文系」
「いや、希美ちゃん◯大やろ。すごいやん」
ふと思い出したけどみんな頭いいんだった...
目的もなくファインアート科にいる私のような美大生はどうしたらいいか分からない。
「小春ちゃんって◯芸大なんよな?
絵やってるって聞いた」
「小春の展示こないだ行ったけどすごい良かった!」
「いやいや」
「母から写真見せてもらったけどすごい綺麗だった、将来は作家になるの?」
色素の薄い褐色の瞳と視線が絡む。
猫っぽいキリッとした目は大きく、
奥二重。
スッと通った鼻筋に、顎のライン。
締まった口元。栗色の髪を
サラッと前に流しただけの簡素なヘア。
知的な印象が漂う。
一瞬時を忘れたように見入ってしまい
ハッとなり、我tにかえった
「あ、うん、就職か悩んでるけど作ることは続けていこうかなと」
「留学とかしないの?」
「してみたいけどね」
「へえ」
そうだ、覚えてる、この瞳。
なんでこんなに茶色いんだろうって、
不思議に思ったんだっけ。
「玲くんって純日本人だよね?
色素薄くない?」
「そう、元から薄めだったけど、
硬水とか紫外線とか、環境のせいもある」
ピザが運ばれて来て、みんなで食べ始めた。
「またみんなで会わん?夏休みいつ終わるん?」
「私10月いっぱい」
「私は再来週から〜」
「僕は9月半ば」
「おー。小春ちゃん長ない?」
「そうなの」
「いいなー」
「俺赤煉瓦のドイツフェスいきたいねん。来週なんやけどみんなで行かへん?」
「いきたい!わたし10日空いてる!」
「私もいける!」
「あー空いてる」
「じゃあ10日な、やったー」
「あのさ」
唐突に玲くんが話しかけて来た。
「ん?」
「学校でどんなことしてるの?」
「あー、普段は制作ばっかり。
歴史とか教職とかの座学以外はアトリエで」
「へえ。」
そこで会話が途切れてしまう。
なんだか掴めない...
そこでまた思い出す。
ママ友会の幼なじみで集まった時
ごく稀に混じっている物静かな子。
それが洋くんへの印象だった。
基本無表情で、同年代の中では落ち着きのある印象だった。
目をクリクリ動かし周囲を観察する。
無意味にじゃれ合ったりせず
とっつきにくい感じだった。
いきなり話しかけて来る。
私が絵日記の絵を描いていた時、
いきなり横に座って
不思議そうに手元を覗き込み
話しかけて来たのを思い出した。
「これなに?」
「夏休みの宿題。今日のこと描いてるの」
「へえ。」
「.....」
そこで会話は途切れ、無言に。
洋くんは気が済んだのか、少し観察したかと思えば
横をスルッと離れて行って
しまった。
そのシーンを思い出し、何とも言えない気持ちになっていると
廉ちゃんが言った。
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