モブに徹する
@sand_clock
モブに徹する
学校のどこかから爆発音が響く。ガラスの雨が校庭で練習していたサッカー部の一人に降り注ぐ。輪唱のように叫び声が重なり、遠く伸ばされた爆発音の代わりに響く。
制服が焼け焦げ、皮膚がの一度ドロドロに溶けひっついてるだけになったそれを振り回し、頭蓋骨の形がはっきりとわかるほどになった誰かが空いた窓から落ちる。運が悪いことに、頭がちょうど花壇の縁に当たり、スイカにように割れた。あの人の血は植物の栄養になるのかな。ふと、そんな考えが頭の底から浮上してきた。
離れたところにいる生徒は皆スマホを掲げていた。ガラスの雨を浴びた彼は地面の上を転がっている。そんなことをしても、ガラスの破片が体をさらに傷つけるだけなのに。
夕焼けを背後にカラスが寂しげに鳴いたので帰りました。
ビルが爆破され、瓦礫が歩道に降り注ぐ。周囲の人たちの髪や服が白く染められていった。そこに赤が混じっている人は少なくない。瓦礫に潰されて目玉が飛び出てる死体を踏みつける。お腹の膨らんだ女性が倒れていたけど無視して、周囲の人間とおしくらまんじゅうしながら逃げました。
線路に誰かが飛び込む。ベタンと線路に肉体を叩きつける音が短く響き、直後、私は血と糞は詰まったズタ袋です、と電車に手伝ってもらいながらそう主張し、バラバラになって吹っ飛んだ。頬に何かがつく。触るとそれは温かく、見ると指が紅く染められていた。一瞬、お手洗いに行き、顔を洗おうかと思ったがやめた。どうせ誰も私に注目しない。それに電車がいつ出るのかも分からない。顔なんかを気にして洗っている間に、電車が出てしまうなんてことは避けたい。
せっかくだから他の人と混じって肉塊の写真を撮った。どこがどこの部位なのか判別がつかない。顔を探したが見当たらなかった。しばらくして運行が再開して、電車に乗りました。
見覚えのある顔――名前は一文字も知らないが同級生のはずだ。多分。――が、誰か電話を貸してください! と声を大きく上げながら走ってくる。鉢合わせると面倒くさそうだったから別の道で帰ることにしました。
隣の席の子が数学の授業中に手首をカッターで切った。見ると無数の傷跡があった。血溜まりが徐々に私の机に向かって進行する。しばらくは黒くなった床と口を冒す鉄の匂いと過ごさなければならない。席を立ち上がり、他の人たちと同じように叫んだ後、机を離して数学の復習を始めました。
次の教室へ集団で移動した。大きな鏡が置かれた廊下を通る。鏡の中に皆はいた。でも私はそこにいませんでした。
この前のテストが返される。平均点だった。誰かが歓喜の声を上げる。誰かが押し殺した泣き声を上げる。私は他の人と同じように泣いてる子の周囲に集まった。皆は励ましの言葉やその子よりもひどい点数を見せる中、私はただ眺めていました。
スマホを触りながら冷えたご飯を口に突っ込み、よく噛んでから飲み込む。――あれ、今の味があったっけ?――適当に読んでいたニュースに付けられた無難なコメントが評価されている。どこかで聞いたことのある有り触れた言葉、匿名の皮を被り、誰かの口を借りたコメント。私は黙って評価ボタンを押しました。
隣の家が火事になっていた。煙が私の家に当たる。
ああ、いやだなあ。そこ私の部屋側なのに。窓にも後からカーテン付けなきゃ。
部屋の窓から消火の様子を見る。胎児のように丸まり、あちこちから骨が飛び出す死体を見つけた。お隣さんとは毎日顔を合わせていたけど、それが誰なのか、全く分かりませんでした。
忘れ物をしたから学校へもう一度行った。重いバックは家に置いてある。教室で誰かが言い争っている。邪魔しないようにこっそりと取りに行こうかと思ったが、おとなしく廊下で座って待つことにした。
「お前のせいで翔子と姉さんは……! どうして爆弾なんか仕掛けたんだ!」
「だってあいつらが私とこう君の仲を邪魔したんだもの! ……でも私気づいたんだ。あなたからの愛を求めるよりも、爆弾で多くの人を殺した方がずっと幸せだし注目されるって。だからあなたはもういい」
短いうめき声の後、教室は静かになった。
終わったと思い教室に入る。
血走った目を見開き、包丁を男に突き刺した女と目が合う。床にまたもや血溜まりができていく。女が奇妙な笑い声を上げながら、背負っているバックに繋がれたスイッチを入れた。
キーンという音が私の耳を支配し、視界が白で染めつくされ――――――――
『午後六時頃、都内のxx学校で爆破事件がありました。現場からは一人の死体が発見されましたが、現在身元、性別は不明です。今から判明しているだけの情報を読み上げますので、何かご存知の方は下記の電話番号へご協力をお願いいたします』
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