華の金曜日とタクシードライバー

城西腐

プロローグ タクシーの車内で

 ホテルを出て路上を乳繰り合いながら並んで歩き、大きな通りまで出た。

 クルマの通りは意外に少ないが異様なまでにタクシーの占める割合が多く、難なく空車を止めることが出来た。


 高木ブーによく似た温和そうな雰囲気のドライバーに丁寧に迎えられ後部座席へ2人で並んで乗り込む。

 ここから自宅までの位置関係を考えると先に降りるのは彼女の方。

 彼女のナビゲートを頼りに自宅近くのお目当のコンビニまでタクシーを走らせる。


「そこのコンビニの手前の信号で停めてくださーい♡」

「お客様お一人だけ降りられるんですね?それではお気をつけて」

「有り難う御座いまーす♡」

 奥側に座っていた彼女を降ろすために僕も一旦降車し、服の上からさりげなく片方の乳房に手を添えながら彼女をその場で見送った。

「今度家遊びに行くな!またね!」

「オッケー!じゃぁねー♡」

 再び後部座席に乗り込んだのを確認しドライバーがクルマを出す。それを合図にという訳でもないのだが、そこで初めて僕も自宅の住所を告げる。


 最初の信号で停車した辺りでドライバーが突然話しかけて来た。

「あのぉ、お客様のことをこう言うのも失礼かも知れませんが、彼女さんめちゃくちゃ可愛いお方ですねぇ…」

「彼女?さっき降りて行った女性のこと仰ってます?」

「そりゃそーですよぉ〜。他に誰もいないじゃないですか?(笑) あれ、もしかしてお兄さん私見えてない方ここに居たりします⁉︎(笑)」

「いえ、1人ですよ(笑) たださっきの女性は彼女でも何でもないです」

「なるほどお友達ですかぁ。羨ましいですねぇ、可愛いお友達いらして…」

「それが友達という訳でもないんですよ。知らないヒトです。さっき知り合いはしましたけど(笑)」


「…⁉︎」

「知らないヒトです。『今度家行く』とは言いましたけど実際名前も連絡先も知らないですもん」

「ぇぇえ⁉︎」

「そうなんです。調度2時間前位ですかね、知り合ったの。すぐ解散しちゃいましたけど…(笑)」

「そんなコトがあるんですか…?軽くバーで飲まれてたとかですか?」

「軽く飲むだけのつもりだったんですがSEXして来ちゃいました。何だか意気投合しちゃって(笑)」

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