鈴蘭の花

 彼女との再会は、思いも寄らぬ形となった。

 兄が妻にと要求した第二王女が、彼女だったのだ。

 顔合わせの場では、上手く動揺を隠し、初対面を演じられただろうか。


 盛大に行われた結婚式、笑顔で民に手を振る彼女とは裏腹に、私はどうしても笑顔が作れなかった。平静を装うだけで精一杯だった。

 女とはこうも強いものなのか。

 それとも、彼女が好意を寄せてくれていると思っていたのは、ただの自惚れだったのか。


 式の後、私は父に諸国漫遊の旅を願い出た。様々な地を訪れ、知見を得てくることを名目に。

 本当は、兄の隣で頬笑む彼女を、兄の妻となった彼女を見ていられないだけだったのだ。


 まずは、約束の場所へ行こう。

 他人のそら似かもしれない、一縷いちるの希望にすがって。

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