鈴蘭の蕾

 留学中の私のもとに、国元から伝令が届いた。開戦のため、帰国せよと。

 慌ただしい準備の合間を縫い、彼女に別れを伝えに行った。

 急な用事で、帰国しなければならなくなりましたと。用が済めば、必ず戻ってきますと。

 彼女も、お待ちしておりますと、応えてくれた。


 これが今生こんじょうの別れになる可能性が高いことは、彼女も気付いていただろう。

 けれども、再会の約束をせずには居れなかった。これを最後にしないためにも。


 戦がどれだけ続くか分からない。

 戦で命を落とすかもしれない。

 戦が終わっても、再び留学の許可が下りるとは限らない。

 戻ってこれたとしても、彼女も留学生、国に帰っていないとは限らない。

 それでも、約束があればそれを目印に頑張ることができるのだから。

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