第19話 中身を見てみないと、分からないことが極稀に存在する。
ノアさんの情報を整理すると、残り三対は何れも水に関わるものばかりだった。 一体目は蛙っぽい奴 二体目はヒトデと言えば良いんだろうか? 星型で二足歩行するらしい。 三対目が鮫だと言う。 でも鮫が洞窟外に出たのだろうか? どうやって? ピチピチ跳ねて? もしかしたら脚でも付いているのかもしれないな?
「あと三匹か、敵が何であれ俺達は進むしかねぇんだが・・・・・。 おいノアさん、本当にこの競技で終わりにしてくれるんだよな? これ以上競技が増えたりしないんだよなぁ?」
「はい、私もこれ以上は無いと聞いています。 たぶん無いんじゃないですか?」
ノアさんが聞いていないとなると、終わらせてくれるかもしれないのだが、俺はちょっと気になったので一つ質問をしてみた。
「それじゃあノアさん、この競技の事は何時知りましたか? トーナメントの途中では聞いていたんですよね?」
「いえ全く、私も閉会式の時に知りました。 きっとマリーヌ様の気紛れなんじゃないんですかね?」
「ああん?! ってことは何か? 気分次第で四つも五つも増えやがんのか?! そんなもん何時までも付き合ってらんねぇぞ! いくら王様の命令だって、これで終わんなきゃ帰らせてもらうぜ!」
「大丈夫よべノム、私なら結構楽しいからー。 ねーエルちゃん。」
エルは首を横に振っている。 あまり楽しんではいないらしい。 まああんなGの粉とか被ってれば当然だろう。 俺としても、このまま何度も付き合いたくもない。
「え~、楽しくないのー?」
「ほら見ろ、楽しんでるのはお前だけだぜ。 もうこんな事はチャッチャと終わらせて、とっとと王国に帰んぞ。 じゃあ先に進むからな。」
「はいはーい。」「・・・うん。」「へ~い。」
俺達は遺跡の通路を進みだした。 この遺跡はかなり大きいものの様で、小さな部屋や大きな部屋が無数に点在している。 目的の魔物以外でも、小さな虫や、動物タイプの魔物はそこら中に繁殖していた。 しかし何れも弱く、目的のフレーレだけがはしゃいで頑張っている。
もうかなりの距離を歩いているのだが、道はまだまだ続いていた。 なんか凄く広い。 道自体はそれほど複雑でもないのだが、下手したら今日中には終われないかもしれない。
「あの、ノアさん。 この遺跡の地図とか持ってないですよね? なんか凄く広いんですけど。」
「いや~、そう言われましても、この遺跡は最近になって発見されたものですから。 魔物が出るとあって、内部の探索はされていないと聞きますよ? だから歩くしかないんじゃないでしょうね。」
おおう、まさか未踏の遺跡の探索をさせられていたとは、マリーヌ王恐るべし。 一応罠が無いのがせめてもの救いだな。 それとも、魔物が全部発動させた後だから無くなってるのかも?
もう歩き続けて三時間は経ち、他のチームはもう終わってるんじゃないかと思う。 更に一時間が経ち、もう殆どやる気を失った俺達(一名除く)だが、やっとの事で目的の魔物の一匹を探し当てた。
見つけたのはヒトデの魔物だ。 説明通りに二つの脚で歩いている。 背丈も人とそれ程変わらず、何だか着ぐるみでも着ている様に見える。 本当に入ってたらちょっと困るが、きっとそれは無いだろう。 ・・・・・たぶん。
「はぁぁ、やっと一匹居たぞ。 おいフレーレ、やっちまえ。」
「よ~し、いッくわよー!」
張り切って飛び出すフレーレは、一気に詰め寄ってボディーに一発パンチを入れた。
「ゲフッ!」
それだけでヒトデはピクピクと震えて動けなくなっている。 こんな大きさをして随分弱いものだ。
「う~ん、結構軽くやったつもりなんだけどー? もしかして弱い? ちょっと残念だわー。 じゃあ止めを刺しときましょうか。」
フレーレが止めを刺そうとする中、俺は見てはいけない物を見つけてしまった。 背中の筋に隠れて、知ってる物体が見えた。 あれはまさか・・・・・ ボ、ボタンの一部なんじゃ? まさか本当に人間が入ってるんじゃ?!
「ちょっと待ったああああああああ! 待って待って、ちょっとだけ待って! 隊長、こ、これ、人間なんじゃないんですかね?」
「何言ってやがる、そんな訳が・・・・・。」
俺は背中のボタンを指さし、隊長達にそれを教えてあげた。 隊長はその部分を調べて、ボタンの様な物を開けると、中からは人の体の一部が見えている。
この着ぐるみに入っていたのは、四十ぐらいの男の人だった。 しかし何だろう、この着ぐるみを着ていると魔物に襲われないんだろうか?
「危うく殺すところだったぞ。 このまま見なかった事にしたいんだが、どうせ全部映ってるんだよな? はぁぁ、この人は本当に何してんだよ。 おいバール、お前この人を出してやれよ。」
「あ、はい。」
着ぐるみから引きずり出し暫くすると、その男が目を覚ました。
「お、お前達、いきなり何をするかああああああああ! 私が一体何をしたと言うんだ! 何か恨みでもあるのか!」
「あのなオッサン、こんな魔物がうようよ居る中でそんな恰好してたら、普通は魔物と思うだろうが。 もう少しで事故が起きる所だったんだぞ、お前が反省しやがれ。」
「何を言うか! この赤く毒々しい色、そしてこの動きやすい機能美。 更には人だとは思わせない様に、凶暴な魔物の臭いまで染み込ませてあるのだ。 これを装着していれば絶対に人間だとは気付かれないのだ! この遺跡を調査する為には最適な道具だろうが! それに、この私が遺跡の調査をしなければ、一体誰が調査をすると言うのだ! いやそれより、お前達こそ一体誰だ! この遺跡は立ち入り禁止になっていたはずだ。 まさかお前達、盗掘しにきたのか?!」
「どうせ聞いてねぇんだろうけどよぉ、俺等はマリーヌ王に言われて、この遺跡の魔物退治に来たんだぜ。 もう入り口の方は安全だから、オッサンはもう帰ってくれ。」
「ほう、なる程、やっと私に真面に護衛を付けてくれたという事だな。 では行くとしよう、私に付いて来い!」
「だから、俺達はアンタの護衛じゃなくてだな! おい、勝手に進むな、おいコラ!」
先ほどの男は、俺達の事を護衛と勘違いして進んで行ってる。 もう着ぐるみも脱がせているというのに。
「あの、ノアさん? これ倒したって事で良いんですよね?」
「良いんじゃないですか? 魔物じゃないんですから。」
そして俺達はあの男を追い掛けて、更に奥へと進んで行った。
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