第15話 各国の思惑とその次。

 試合会場ではフレーレ達の勝利が確定している中。 その試合会場の一角では、マリーヌ王と各国の代表達が話をしていた。 勿論王国の人達は誰も存在していない。 そんな中、何故か参加させられているのは、この俺カールソンだった。 エルさんを追って色々と旅をしたりしているから、帝国の首相から選任命されてしまったのだ。 俺はこんな中に入るべき人間ではないというのに。


 とりあえず此処に居る人物を紹介しようか。 先ずはラグナ―ドから来た使者、百殺将軍グラニデという男だ。 その男が他国の王の前だというのに、偉そうに言葉を発していた。 この場でも鎧を外さず常に戦闘体勢を取っているらしい。


「フハハハハハハ、中々楽しませてもらったぞ。 これ程の茶番はそうあるまい。 なあマリア―ドの、お前もそう思うだろう?」


「そうでございますなぁ。 ですがその茶番も、あの王国の者共の強さがあっての事でしょう。 なにせ我が国の・・・いや、各国の戦士達は、何れも五本の指に入る者達ばかりでございますからなぁ。 やはり王国との力の差はそう簡単には埋まりますまい。」


 今答えたのがマリア―ドから来た男アドラガル。 この男は国の大臣だという。 上物の衣装を着こみ、女に羽根団扇を振らせていた。 もう権力全開と言った所だろうか。


 後一人はマリーヌ様だが、それは紹介しなくてもわかるだろう。 詳細は省いておく。


「そうだ、あれ程の枷を付けられて優勝までしてしまうとは、まだまだ力の差は大きいと考えるべきだろう。 今回参加した者だけを見ても、俺と同等かそれ以上か、そんな奴等しか居なかった。 それにだ、各国共に魔法の力を得たと言っても、まだまだ謎の多い力だ、これまで以上に研究せねばならぬ。」


「あんな者達が王国内にはうじゃうじゃいるとなりますと、どれ程の力になるのやら。 空までも飛ばれるとなると、手のうち用がありませんな。 対抗する為には全兵力の底上げを考えなければなりますまい。 お前は如何思うのだ、帝国の。」


「わ、私ですか? 私達は生きて行けるだけで充分ですので、争いとか戦争とかはちょっと。 皆さんももっと平和的にいきましょうよ。」


「チィッ、やはり負け犬根性が染み付いているな、王国さえ居なければ帝国なぞ滅ぼしてやるものを。 全く運が良い事だ。」


 冗談でもやめて欲しい。 しかし今回の俺の使命は、そうさせない為に、各国に貢ぎ物を渡す為だ。 俺は荷物を取り出し、帝国からの贈り物という名の、貢ぎ物を全員に渡す事にした。


「いやははは、冗談は止めてくださいよー、そんな事にならないように、こうして色々贈り物を持って来たんですから。 護ってくださるのなら、幾らでもお渡しいたしますからはい。 ほら皆さんもどうぞどうぞ。」


 まあ仕方のない事だ、武力が弱いなら金で信用で護ってもらうしかない。 遠征で誰の命も落とさず、何の危険も冒さずに金品を得られるのだから、十分魅力的な話だろう。


「これは貰っておくとしよう、だが約束は出来んぞ。 此方にも都合というものがあるのだからな。 それにな、王国が何時までも敵にならぬとは限らぬぞ。 王国がお前達の敵に回ったのなら、貴様らは一体どうするのだ? 手を上げて喜んで殺されてやるのか? ならば今生きている意味など無い。 この場で果ててみるのも一興だぞ。」


「それも含めての贈り物なのですから、今後もよろしくお願いします。 私達を護ってくださるのなら、来年も再来年も、継続してお支払いいたしますから。」


「フン、まあいい、それでマリーヌ様は王国と手を結んで、これからどうなされるお積もりか?」


「何のお話か存じ上げませんが、そう出来るのならば、それもまた一つの手でしょうね。 今後は接触を図り、友として迎え入れても良いかもしれませんね。 この大陸内部で争い続ければ、海の向こうの国々が動き出すかもしれませんし。」


「何を惚けられるのか、もう調べはついているのですよ。 貴女が王国と手を結んでいる事は。 もうこれは、ブリガンテも敵と捉えられても可笑しくはありませんぞ?」


「この国に攻め込もうなどと考えない事ですね。 夜襲、朝駆け、不意打ち、やりたいのならばやれば良い。 ただし覚悟をするのですね、私達は何時でも、例え今であろうと準備は出来ておりますので。 ・・・・・何方が負けるか試してみますか?」


「フン、この力関係は未だ崩れずか。 この大陸を魔物で埋め尽くした罪は重いというのに。 だが例えどれ程の時を有しても、王国には滅んでもらわなければならぬ。 魔物に食い殺された人々の為にもな。」


 確かに王国は魔物と呼ばれる生物を世に放った。 しかしそれは我が帝国との戦いで生き残る為にした行いだ。 それで後の世がどうなるかなんて、その時には分からなかった話だろう。 罪がないとは言わないが、戦争とはそういう物だという話だろう。


 しかしそれを捌こうとするこの男の正義だろうか? しかしその為に戦争を望むというのなら、やはりこの男は悪なのだろうか? 戦争が起これば無関係の人間が死ぬというのに。   


「さて皆さま、折角この国に集まって貰ったのですから、各国の選手達にはもう一仕事してもらいましょうか。 今度はもう少し命懸けでね。」


「ほう、まだ働かせる気か? しかも命掛けだと? 我が国の戦士がその程度で臆するものか。 良いだろう、その誘い受けてやろう。」


「ふむ、では私もそれに乗りましょう。 我が戦士達もそれなりに優秀ですからなぁ。」


 如何しよう、皆さん受けるつもりらしい。 これを受けたら、選手としても登録している俺まで参加する事になってしまう。


「わ、私達はご遠慮させていただきますね、帝国兵の力はまだそんなに強いものではありませんから。 無駄に死なせるのは可哀想ですからね。」


「よろしい、では四か国が参加するという事で宜しいですね。」




 マリーヌ様の問いに二人が頷き、その情報は各選手に伝えられた。 しかし王国選手にだけはその情報は伝えられず、そのまま閉会式を迎えた。

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