第10話 どういう育ち方をしたらそうなるんだ。

 今舞台上では、俺と戦ったアラキレウスとラムラヴァイアという女性が戦って、三位決定戦が行われていた。 だが俺はそれを見る事なく、のんびりと休憩時間を楽しんでいる。 決勝の時間は二十分後、それまで俺は暇なのだ。 だから俺は会場近くをぶらついて、出店で腹をみたしたりしいた。


 俺の戦いは次の決勝で終わる。 それに勝てれば俺の優勝と、そして王国の名声もドーンと上がる分けだ。 一時は面倒だと思っていたが、残り一回ならば全力で行くべきだろう。


 それに試合に勝てればイモータル様にも褒められるだろうし、もしかしたら隊長よりも偉くなれるかもしれない。 そうなれば権力と美貌を兼ね備えた俺は、もう無敵と言っても良い。 きっと女性の方から俺に寄って来るだろう。 全く素晴らしい事じゃないか。 もう笑いが止まらない!


「フフフ・・・やってやろう! フハハハハハハ!」


「おい大丈夫かあいつ? いきなり道で笑い出したぞ。 警備兵でも呼んだ方が良いんじゃないか?」


「きっともう誰か知らせているよ。 お前は関わらない方が良い。」


 何だか周りがおかしな事を言ってる。 俺は別に何もしていないというのに。 変な事にならない内に此処を離れるとしよう。


 まだ時間があるし、俺は道行く女性に声を掛けてみる事にした。 もうこの間の様な大ハズレを引く様な事は無いだろう。 だが誰に声を掛けるのかが問題だ。 ブリガンテの女性は総じてスタイルが良く、探すまでもなく、綺麗な女性がドンドン目の中に飛び込んで来ている。


 居た! あの娘にしよう。 俺が目を付けたのは、俺と同じぐらいの身長で、黒髪のセミロングの女性だ。 少し幼く見えるが、それも彼女の魅力の一つだろう。 歳はたぶん・・・十八か十九かその位だと思う。 前の様な変人でない事を祈り、俺はその娘に声を掛けてみた。


「そこの美しい人、少しだけ俺とお話をしませんか?」


 彼女は振り向き、俺を見て少し困った顔をしている。 だが直ぐに笑顔を浮かべて、俺へと微笑みかけた。


「お母さ~ん、また変なおじさんに声かかえられた~。 もうやだ~。」


 おか? ・・・・・後を見ると、お母さんと呼ばれた女性が俺を睨んでいる。 どう見ても彼女より少し年上にしか見えない。 そしてその隣には、武装した兵士が何人も並んでいる。


「アナタ、家の娘に何をする気なんですか! あの子まだ十歳なんですよ! 皆さん、何時もの様に、この変態を捕まえてください!」


「えええええッ! これで十歳?! おかしい、明らかにおかしいです! この見た目で十歳なんて、誰も分かる訳が無いでしょう!」


「言いたい事があるのなら、近くに有る兵舎で聞こうか。 痛い目に遭いたくなければ、抵抗せずについて来るんだな。 さあこっちだ。」


 俺の言い訳を聞いてももらえず、俺は兵士達に体と押さえられた。 抵抗出来ない事もないのだが、此処で逃げ出したら絶対に手配される。 そうなったら隊長達に粛清されるかもしれない。 俺は大人しく従って、兵舎まで連行された。


「本当に誤解なんです! あの子をどう見ても十歳には見えないでしょう! 普通大人と思うでしょうが!」


「貴様もブリガンテに住むのなら、彼女の事を知らない筈はあるまい。 こっちはもうそんなセリフは飽き飽きしているんだよ! 毎度貴様のような奴が後を絶たん、例え初犯だからと甘く見るなよ?」


「だから違いますって、俺は王国から来たんであって、あの子の事は全く知らなかったんです!  あ、そうだ、トーナメント運営のノアさんに連絡を取ってください、バールと言えば分かるはずですから! その人に聞けば俺の無実が証明されますから!」


「そんな嘘を俺が信じるとでも思っているのか! さっさと本当の事を話せ。 話さないと罪が重くなるぞ!」


「うあああああああ駄目だこの人、全く話を聞いてくれない! このままじゃ決勝の時間に間に合わないじゃないか! 何で俺ばかりがこんな目に遭うんだ!」


「煩い黙れ! さあ犯行をみとめるがいい!」


 中々聴く耳を持ってくれないこの人達に、俺はひたすら説得を続け三十分後。 そんなに言うんならお前の嘘を暴いてやろうと、やっとの事で確認をしてもらえた。 もう試合は終わってるかもしれない。


 そしてその報告が上がって来た時、俺の無実が証明された。 俺は釈放されたのだが、この兵士達はまだ俺の事を疑っている。 何か変な事をすれば、また捕まえに来るだろう。


「もう二度と来るんじゃないぞ。」


「へ~い・・・・・。」


 俺は兵舎から追い出された。 たぶんもう不戦敗で負けが確定してると思うが、一応会場へ行ってみるとしよう。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 バールが兵士に捕まり兵舎に連行された頃。 舞台上には相手の選手が立って居るた。 もう何分も待たされて、勝ち名乗りを待っている様だ。 この俺べノムは、そんな居なくなったバールを探している。


「何処行ったんだあの馬鹿野郎は! 折角決勝にまで来たってのに、このままじゃ戦わないまま負けちまうじゃねぇか! 一体どうするんだよ!」


 しかし何処を探しても一向に見つからず、終わりの時を迎えようとしていた。 ブリガンテの女王マリーヌ様が舞台上へと上がり、この会場の全員に宣言した。


「この場で勝ち名乗りを宣言しても良いのですが、決勝がこれでは盛り上がらないでしょう。 ですのでもう少しだけ時間を与えるとしましょう。 アツシさん、舞台上にお上がりなさい!」


 アツシと言っても俺の事だろう。 マリーヌ王は、俺の方に指をさしている。 このまま負けるよりはと、俺は舞台上に行く事を決めた。


 ・・・・・ただ、何もせずに待つだけなら、俺の事なんて呼ばないはずだ。 舞台に上げて、俺に何かさせる気なのだろう。 嫌な予感しかしねぇ・・・・・。


「来ましたねアツシさん。 時間を与えると言っても、ただ与えるだけでは芸が無い、お客様にも退屈させてしまうでしょう。 そこで提案です。 貴方にはこの舞台上で、今まで負けて行った方達と勝負して貰います。 貴方が負けなければ、その分だけ時間を伸ばして差し上げましょう。 そしてこのアツシさんに勝った方には、この大会の賞金の半額をお渡し致しましょう! 何度挑戦なされても構いません、さあ、手を上げる方はいらっしゃいませんか?!」


 つまり、俺が負けなければ、幾らでも待つと言ってるんだな。 このマリーヌ様は、俺と戦った事もある人物だ。 俺の強さは承知してるだろうに。 バールが戻って来るまで、俺に永久に戦えと言ってるんだろう。


「いよぉし! やってやろうじゃねぇか! どいつでも良い、挑戦したい奴は何人でも掛かって来やがれ!」




 俺はマリーヌ様から真剣を投げ渡され、舞台上に挑戦者達が押し寄せて来た。

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