隠居魔王の成り行き勇者討伐 倒した勇者達が仲間になりたそうにこちらを見ている!

水上 天

第1話 私、こいつをボコボコにしたよね?

この50年、日本で過ごしていた山内 美奈やまうち みな大魔王だいまおうドラド・バルドの娘。「魔王まおう」スリューネ・バルドに生まれ変わってからそんな長い月日が流れた。

そんなある日


「ぼ、僕を、仲間なかまにして下さい!」

「なあ。じぃ。こいつは何を言っているんだ?」


 たまたま標高ひょうこう4500mにある私の城「シルリアス城」。人間で言う「魔王城」から買い出しに出てきたんですが。父上―つまり大魔王様の呼び出しを無視してたせいで…。なんですか?…なんで魔王が買い出し?ですって?それ少しこの世界の人間の作る「お菓子」を食べ過ぎてしまってですね。それで、じぃに怒られてしまったからです!

 そんなことより。そのせいで父上の強制転移の魔法陣まほうじんが城の門に設置されていて、父上に強制転移よびだされた後、

「ぐうたら城で過ごしやがって!今すぐ隣国の勇者を討伐してこい!!!」

と怒られてしまって…。しかし今の私は強いですからね。そこら辺の勇者なんか軽くボコボコにしてやったんですけど…


「だめ…でしょうか。」

「なぁ、じぃ。やっぱりこいつあほか?」

「どうでしょうかねぇ。ほっほっほ」

「魔王様ぁ~!!どうか!僕を仲間に!」

「お、お前は立場をわかって言っているのか?私は「魔王」スリューネ・バルドだぞ?」

「はい!僕はグリード王国の「勇者」ジル・バルドロンです!」

「どさくさに紛れて自己紹介するでない!キャラが強すぎて覚えたではないか!それならばなんでそんなことをいうんだ!」

「僕は、スリュ…魔王様のお美しさに見惚れてしまい、一生ついていきたいとおもったからです!」

「うつく…てか!お前!いま真名なまえで…やはり命知らずだな。」

「魔王様のためなら何でも!」

「はぁ、私の負けと認めよう。よかろう仲間に入れてやらんことも無いぞ。」

「本当ですか!」

「あぁ、本当だ。」

あぁ負けた。本当に負けた。いろいろと…


「魔王様!!勇者討伐に行きましょう!!」

「いやだ」

「何でですか!!」

「だって面倒くさいだろう?」

「また大魔王様に怒られますよ?」

「ぐっ…」

「行きましょう!」

「いやだっ!…やめろ!腕を引っ張るな!変態!痴漢!あほ勇者!」

「…んんっ!……今の罵倒、もう一度…」

「いやぁぁぁぁ!!!」



「魔王様…これって勇者討伐じゃないんですか…?」

「勇者討伐だぞ?」

「ならば、なぜ討伐対象がいるレート王国へ向かっていないのですか?」

「面倒くさいからだ。」

「それでいいのでしょうか…」

「いいのだ」

いいんです。なぜならばこれは父上から逃げる為に行っているのですから。

己の自由を獲得する為の正義!そう!正義なのです!


ガサッ


「な、何者です!!」

「やめろ勇者!剣を引け!」

『我は闇の精霊 マグザネス である。』

「「精霊ぃ?」」

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