通勤特怪

葵流星

通勤特怪

いつからだろうか、こんなに生きるのが鬱陶しくなったのは…。

見れば、もう朝だった。

私は、終電を逃してしまい駅に残っていた。

そして、私は眠ってしまった。

やってられるか!っと、ばかりに酒を口にしたのがまずかったのかもしれない。

どっちにしても、眠気には勝てなかったからだろう…。

睡眠不足を誤魔化す為に栄養ドリンクを飲んだ。

医者からは控えるように言われていたが、どうしても使ってしまった。


そして、電車がやって来た。

私は、電車に乗り込み、椅子の真ん中に座った。

荷物をおろし周りを見まわたすとそこには、人がいなかった。

まあ、こんな朝早くから誰もいないだろうと思った。

ちょうど、腕時計は三時くらいを指していた。


ともあれ私は、これで安心して安アパートに帰れると思い、うたた寝をした。

しかし、何故かアナウンスが流れて来なかった。

目を覚ました私は、周りを見渡したがやはり、誰もいなかった。

私は、何故か怖くなり人がいる車両を探した。

だが、どの車両にも人は居なかった。

そして、運転席を見に行く事にした。


その途中、新聞紙が落ちていたので手に取ってみた。

見慣れない地方紙だと思い、私はそれを手に持った。


一両目に着くと私は、運転席を覗き込んだ。

けれど、何故か運転手は見えなかった。

あまりよろしくはないがスマートフォンのライトを使い覗いた。

けれど、ただレバーが小刻みに揺れていて計測器は段階的に変化していた。

ふと、自動運転の実証実験でもしているのかと思った。

けれど、それならそれで誰かいるはずなのだから、そんなことはないっと、思った。

だと、すればこれはどういうことだろう?


そして私は、つい、運転席をスマートフォンで撮影した。

アルバムを確認するとそこには、ひとが居た。

また、運転席と客席を仕切るアクリル板には椅子に座っているひとが反射して居た。

再び目をやるがどこもかしこも虚空であった。

慌ててもう一度、スマートフォンを操作してカメラを開いた。

運転席は、やはり誰も居なかった。

そして、スマートフォンをしまおうとしたが、誤ってビデオカメラを開いてしまった。


「お客様、運転席を撮影するのはご自由ですが、フラッシュ撮影はおやめください。列車の運行に支障が出ますので…。」


私は、慌てて謝り、すぐさま元居た車両まで戻った。

すると、駅に着いたのだろうか列車が止まった。

終電ではあったが流石に周囲の目が、気になり。

私は、その駅で降りることにした。

私と入れ替わるように老人が列車に乗り込んだ。

紳士服のような物をその老人は着ていて、赤いネクタイもしていた。

私が振り向くとそこには、スーツを着た青年が居た。

赤いネクタイを締め、これから行くぞと言わんばかりに気合を入れているようにも見えた。




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通勤特怪 葵流星 @AoiRyusei

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