一夜で世界が終わるとしたら

烏猫秋

第1話


 『序章』

 

 『時は金なり』ということわざを知っているだろうか。

 

 意味は、時間は貴重で有効なものであるから浪費してはいけないということだ。

 これは、西洋のことわざTime is money.の日本語訳だということは、多くの人が認知しているだろう。

 物事は実際の出来事に例えると、分かりやすい。

 例えば、お金はたくさん掛かるが目的地に早く着く車と、お金はあまり掛からないが目的地に着く時間が遅い電車があるとしよう。

 ここでは、どちらを選ぶか迷う優柔不断な人と、決断が早い剛毅果断な人が出てくる。

 もちろん、俺は『時は金なり』に倣い、前者の車を選ぶ。

 中には、後者の電車を選んだ人もいるだろう。

 ここで知ってもらいたいのは、互いの考えを理解できる人は少ないということだ。

 前者を選んだ人は、後者を選んだ人の考え方が分からず、また逆も然りだ。

 結果は同じなんだから、どっちでもいいなどと言う人も出てくるかもしれない。

 リアルマネーの消費量を比較する人もいる。しかし、この場合お金の話など関係ないのだ。今は、時間の話をしている。

 まあ、こんなに長く語っている

 

「時間が無駄だ」



 

 近年、世界規模である事件が頻繁に起きている。

 それは、特殊な突然死だ。

 若い世代から、高齢世代にかけて幅広い年齢層が狙われている。

 つまり、誰でもいい。そういうことになる。

 これは、人類にかなりの恐怖になる。

 いつ狙われるか分からない。誰が狙われるか分からない。

 人類は常に恐怖し、緊張感を持つ。

 が、そこが奴らの狙い目だ。

 恐怖で、冷静な判断力を失った人を襲うことなんて容易いことだ。

 

「ガブッ!」


 足がすくんでまともに歩けない人を、後ろから飛びかかり噛みつく。

 そして、奴らがそこからするのが『時間の奪取』。

 相手の時間を喰らい、自分の時間に変換するのだ。

 それが、時間を喰らう者。

 

 通称『タイムイーター』だ。


 奴らは、普段は人間の姿をしており、襲う時にだけ邪気を放ち、形質を変化させる。

 本当に厄介な奴らだ。

 

 世界規模で起き始めたこの事件に、各国は迅速に対策を打った。

 日本では、国家公認のハンターを設置した。

 当然、国家公認ということもあり、試験はかなり厳しいものになっており、試験合格者の定員は決まっておらず、優秀な人材だけを認定すると聞く。

 ということは、合格者が出ない。つまり、国家公認ハンターが出てこない年も出てくる訳だ。

 まあ、そんなことがあってはならないので、試験は夏と冬の2回行われるようになっている。

 しかし、ハンターがいくら頑張っても、タイムイーターの事件は後を絶たないのだ。

 

「これじゃあ、いくらハンターが幾ら居ても、仕事が減らないぞ」


 国家公認のハンターたちは、毎日毎日繰り返される時間の処理・対策に疲れた表情で溜め息をつくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る